2Fatty liver

動脈硬化

肝機能の低下で血管がもろくなり動脈硬化に

肝機能が低下すると動脈硬化になり、心臓病や脳梗塞などを引き起こします。肝臓との関わりも深く、その特徴や病気のメカニズムを知ることで、予防・改善につながります。動脈硬化について詳しくみていきましょう。

動脈硬化とは

血流が悪くなり生活習慣病を招く動脈硬化

動脈は血液と一緒に、酸素や栄養を全身に送る重要な血管です。健康な時は、弾力があってしなやかで、血液がスムーズに流れていきます。年齢とともに血管が老化すると、弾力が失われて硬くなり、老廃物が沈殿して血流の流れが悪くなります。この状態を動脈硬化といいます。

Cause

動脈硬化の原因

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動脈硬化の原因は血管の老化です。その進行に大きく関わっているのが、コレステロールで、むしろ老化よりも危険です。コレステロールには、善玉コレステロールと悪玉コレステロールがあります。善玉コレステロールには、悪玉コレステロールを抑制して動脈硬化を防ぐ働きがあります。
一方の悪玉コレステロールは肝臓で作られるコレステロールです。栄養が偏ったり食事が乱れると、これが増えすぎて中性脂肪が高くなります。肝心の善玉コレステロールも減少してバランスが崩れてしまいます。血液がドロドロに濁って血管の内側に沈殿して堆積すると、動脈硬化を引き起こします。脂肪肝が動脈硬化の進行に拍車をかけるといえるでしょう。
 

動脈硬化を引き起こす危険因子

肝機能の低下以外にも、動脈硬化を引き起こす危険因子はいろいろあります。普段から肝臓を酷使生活しているのに加えて、次のような危険因子に心当たりがあるなら、動脈硬化を予防するために生活習慣の改善を始めた方がいいかもしれません。

喫煙

タバコが体に及ぼす害は数多くあります。動脈硬化のリスクを上昇させるのも、その一つ。タバコの煙にはニコチンや一酸化炭素、酸化物質などを含みます。一酸化炭素は、血液中の酸素を不足させます。

また、タバコの煙が持つ酸化物質は内皮細胞へダメージを与えます。さらに、ニコチンは副腎皮質や交感神経を刺激。血圧上昇や心拍数の増加、末梢血管の収縮を引き起こします。

血管は、金属のように錆びていく器官です。タバコの煙は、血管を錆びさせ、動脈硬化を引き起こしてしまうのです。

例えば、喫煙による酸化ストレスと動脈硬化の関係に関する研究では、次のような研究結果が報告されています。

喫煙すると、たばこ煙が起動や肺胞内の水分に溶解して、CSEが生成する。CSE中に存在する比較的安定なONOO−類似反応物質が肺胞壁を緩やかに透過し血液中に到達して、徐々にLDLを酸化及びニトロ化により変性させ、さらに血管内皮細胞の機能障害及びDNDの酸化損傷を引き起こすことによって、動脈硬化の発症・進展を促進させると考えられる。

出典:『酸化ストレスと動脈硬化』動脈硬化,19(8),1991

肥満・メタボリックシンドローム

ぱっと見の体型は太っているように見えなくても、内臓脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は動脈硬化のリスクを高めます。

運動不足や、加齢、高カロリー食など様々な要因で内臓脂肪が蓄積すると、脂質や糖質代謝が偏ります。高血糖やコレステロール値の上昇、高血圧などの原因には内臓脂肪の蓄積が大元の原因となっています。

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪が蓄積した状態です。リンゴのようにお腹周りが太ったリンゴ型肥満になってきたと感じているなら、メタボリックシンドロームの黄色信号。ご自身がメタボリックシンドロームかどうかは、健康診断などでチェックできますので、メタボ予防のためにも意識してチェックしてみましょう。

<メタボリックシンドロームの診断基準>[1]

  • ・ウエストが男性なら85cm以上、女性なら90cm以上
  • ・血圧、血糖、血清脂質のうち2つ以上が次の基準値を超えている
  • -高トリグリセライド血症 ≧150mg/dL かつ/または 低HDLコレステロール血症 <40mg/dL
    -収縮期血圧 ≧130mmHg かつ/または 拡張期血圧 ≧85mmHg
    -空腹時高血糖 ≧110mg/dL

[1]参考:『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013 メタボリックシンドローム』日本糖尿病学会http://www.jds.or.jp/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/uid000025_474C323031332D32342E706466

高血圧

内臓脂肪の蓄積などにより高血圧が引き起こされれば、血管の内側の細胞が傷つきやすくなります。血圧が高いということは、血管の壁を押す力が強くなっている状態なので、それだけ血管にかかる負担が大きいというのは想像しやすいのではないでしょうか。

血圧と脳卒中の発症頻度を疫学的に調べた久山町研究では、血圧が高い人ほど脳卒中の発症頻度が高まることが報告されています[2]。

[2]参考:『久山町研究からみた動脈硬化とその関連疾患』薬学雑誌,127(12),2007https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/127/12/127_12_1997/_pdf

加齢に伴い血管が老化した状態で、高血圧により血管にかかる負担が大きくなれば、ますます血管は硬く、傷だらけになります。この状態が動脈硬化です。

中性脂肪・悪玉コレステロールの増加

中性脂肪やコレステロールなどの脂肪分は、血液中に溶けだします。血液中のコレステロール値や中性脂肪値が高いと、脂質異常症と診断され、動脈硬化を引き起こす原因となると言われています。

例えば悪玉コレステロールが血液内で増え過ぎれば、動脈の血管内壁に脂肪の固まりが蓄積します。この固まりは、プラークと呼ばれ、血流の悪化や血栓の原因となってしまいます。現に、動脈硬化とコレステロール値の関係を調べた久山町研究では、コレステロール値が高いほど、動脈硬化指数が高いことがわかっています。

動脈硬化指数は大動脈でも、脳底部動脈でも血清総コレステロール値の高いグループで増強したが,この関係は若年層ほど直線的で,高齢者では両者の関係が希薄になる傾 向にあった。

出典:『久山町研究からみた動脈硬化とその関連疾患』薬学雑誌,127(12),2007https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/127/12/127_12_1997/_pdf

SymptomBad!

動脈硬化の自覚症状

手足の冷えや爪がもろくなったら要注意

動脈硬化は長い年月をかけて進行するので、初期中期では自覚症状がほとんど感じません。ある程度進行すると、次のような症状が現れます。

手、足の冷え

血液循環が悪くなって手足が冷えます。他の人と比べて、冷たいかどうかで判断します。

指のツメの色が青白い、割れる

血行が悪くなり、爪の色が暗いピンク色や青白くなり、割れたり、横ジワができます。

目の充血、くま

白目には毛細血管が集中していて、血液循環が悪くなると充血したり、眼精疲労や視力低下、目の下のクマができます。

動脈硬化が引き起こす疾患

怖い怖いと言われる動脈硬化。動脈硬化は私たちの体にどんな病気を引き起こすのでしょうか?

脳卒中

動脈硬化の中でも脳の血管で動脈硬化が進んだ場合。脳の血管が詰まりを起こしたり、破れるなどして、脳出血やくも膜下出血、脳梗塞を引き起こすことがあります。脳出血は、脳の血管が破れる病気。脳動脈瘤が破裂したものがくも膜下出血。そして、脳の血管が血栓などにより詰まって引き起こされるのが脳梗塞です。

脳卒中は、日本人の死因の第3位を占めている、怖い病気です。脳卒中で一命を取り留めたとしても、後遺症が残り介護生活が始まる可能性もあります。

大動脈瘤

脳ではなく、お腹や胸の部分にある大動脈の血管壁が動脈硬化でもろくなったところに、高血圧などで圧迫されるとコブ状に膨らんでしまうことがあります。これが大動脈瘤です。

腹部にできた大動脈中は、トイレなどでいきんだ際に破裂することがあります。破裂した場合には、出血過多により危険な状態に陥ることも少なくありません。

参考:厚生労働省e-ヘルスネット「腹部大動脈瘤」(2018年1月17日確認)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-043.html

Prevention Improvement

動脈硬化の予防・改善

動脈硬化になると、高脂血症・高血圧・糖尿病・肥満の、生活習慣病を併発している場合があります。まずは治療を受けてそれらの病気を治すことが大切です。生活習慣を見直すことで、予防・改善ができますので、次のことに気をつけて生活習慣を改善しましょう。

食生活で改善

ビタミン・ミネラル・食物繊維の豊富な食材を多くとり、塩分やコレステロール、動物性脂肪を控えて、青魚・エゴマ油などのオメガ3を補いましょう。内臓脂肪型の肥満になると動脈硬化が進行するので腹八分目を心がけて。

運動で改善

適度な運動で、動脈硬化の危険因子「肥満・高脂血症・高血圧・糖尿病」の予防ができます。早歩きなどの有酸素運動を、1日20分以上続けると、脂肪が燃焼しやすくなり、動脈硬化の予防・改善に効果的です。

喫煙・ストレスを避ける

喫煙や過度なストレスは、血管を収縮させて動脈硬化を引き起こします。禁煙・ストレスのない生活を心がけましょう。