肝機能の低下と遺伝の関係性
遺伝と肝臓病の関係は研究途中ですが、遺伝が原因で肝機能の低下を引き起こすと考えられています。考えられる原因について、遺伝との関係性をみていきましょう。
ウィルス性感染は遺伝する!?
B型肝炎ウィルスは、母体を通して感染するウィルス性肝炎です。「遺伝」と思われがちですが、ウィルス感染が引き起こす肝炎なので、決して遺伝ではありません。これ以外にも、A型肝炎・C型肝炎のように、いくつかのウィルス性肝炎がありますが、それらは全てウィルス感染者の、血液や体液に直接触れた際や、輸血によって感染するものです。親子ともに肝炎ウィルスに感染する人もいますが、ウィルスの型が違う場合もあります。
遺伝と脂肪肝の微妙な関係
脂肪肝と遺伝の関係性ははっきりしていませんが、間接的に影響していると考えられています。肝臓病を引き起こす原因に高脂血症がありますが、特に「家族性III型高脂血症」は遺伝的に中性脂肪の数値が高く、脂肪肝になるリスクも上がります。遺伝性の糖尿病を抱えていると、インスリン不足により、分解した中性脂肪を肝臓が再び取り込んで脂肪肝になることも。このことから、遺伝的な体質・病気が脂肪肝の発症につながると考えられているのです。
体質遺伝が肝臓がんリスクを高める
肝臓がんの原因はウィルス性肝炎なので、遺伝の関係性は薄いと考えられていますが、遺伝的にがんになりやすい人もいます。アルコールに弱い人やウィルスに感染しやすい体質は親から子へ遺伝します。肝臓が弱っている時に肝炎になると、肝硬変や肝臓がんになるリスクも高くなります。また遺伝性の大腸がんや胃がんが、肝臓に転移して肝臓がんになることも考えられます。直接的ではありませんが、間接的に遺伝が関係していると考えられます。
家系的に肝臓が悪い人が多い、という話を聞くことがよくあります。家族の誰かが肝臓病を患っていると、「もしかしたら、うちも肝臓が悪い家系なのかも?」と不安になる方も多いでしょう。こうした話は単なる思い込み。肝臓の異常や病気が、親から子へと遺伝することはまずありません。では、なぜ「遺伝」といわれるのでしょうか。その一つに、食生活が関係しているようです。
バランスの悪い食事は、肝機能の低下や肝臓病を引き起こすと考えられています。 脂っこい揚げ物や濃い味付けのものを無意識に好んで食べる人は、高カロリー・高脂質・塩分過多になりがちです。同じ食卓を囲む家族は食の好みも似ていることから、同じリスクを抱える可能性があります。
アルコール性肝障害を発症するリスクは、アルコールの多飲、または長期に渡って飲酒を続けている人ほど高いといわれています。アルコールは体内に入ると有害物質「アセドアルデヒド」に変わり、それを分解するのが「ALDH2」という酵素。その分解能力はお酒の強い・弱いに比例しますが、両親から受け継いだ遺伝子の型によって決まるため個人差があります。「アルコール性肝障害になる酒量」が一概に計れない点は、遺伝も影響しているといえるでしょう。
参考- 今すぐできる!肝機能を上げる40のルール 順天堂大学医学部消化器内科主任教授
参考- わが国におけるB型肝炎母子感染防止の経緯とuniversal vaccinationの必要性について