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お酒を飲み過ぎない

Method

アルコールを控えて肝機能を改善する お酒を毎日飲んでいると、肝臓に負担がかかり、肝機能が低下してしまいます。お酒を控えることが、肝機能の改善につながることは多くの方に知られていることだと思いますが、具体的にアルコールと肝臓の関係性を学んでおきましょう。ここでは、アルコールを分解するメカニズムや、アルコールとの上手な付き合い方について、紹介していきます。

アルコールに対する
肝臓の働き

アルコールを解毒するメカニズム

摂取したアルコールは、胃および腸で体内に吸収され、肝臓に送られます。肝臓でアルコールは、まずアセトアルデヒドに分解され、その後さらに酢酸に分解され、尿として体外に排出されます。その流れは、次のようになります。

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    アルコールの吸収

    飲酒後1~2時間でアルコールは体内に摂取されます。胃で20%、腸で80%が吸収されて、血液の中に溶け込み、血液は血管を通って約1分ほどで全身を巡りながら、肝臓へと送られます。体内に吸収されたアルコールの95%が肝臓で処理されます。

  • 2

    第一次分解

    肝臓に送られたアルコールは、ADH(アルコール脱水素酵素)の働きで、アセトアルデヒドに分解されます。アルコールを効率よく分解させるために、ADHの働きを活性化させることが二日酔いを防ぐポイントです。

  • 3

    第二次分解

    アセトアルデヒドはアルコールの10倍も毒性が強いとされています。飲酒時に顔が赤くなったり、吐き気、頭痛を起こす原因でもあります。肝臓で分解されたアセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によってさらに分解されて、酢酸に変わります。

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    体外へ排出

    酢酸はアセチルCoA合成酵素の働きなどにより、血液とともに全身を回りながら、水と二酸化炭素に分解されて、尿とともに体外に排出されます。アルコールによる利尿では、体に必要な栄養素も排出されてしまうことを知っておきましょう。

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健康的な飲み方とは

空腹で飲まない

空腹時にアルコールを摂取すると、肝臓に負担がかかります。分解時にタンパク質やミネラル、ビタミンを消費するので、それらを多く含む大豆食品・野菜・果物・ナッツ類等を一緒に食べましょう。

ゆっくり飲む

アルコールの分解には3~4時間必要です。ペースが早いと分解が追いつかず、肝臓に負担がかかります。まず自分のペースを知りましょう。日本酒1合を30分ぐらいかけてゆっくり飲むのがベストです。

量を控えめにする

飲みすぎると二日酔いや悪酔いのもと。体格や体質によって飲める量が違うので適量を知りましょう。早めにウーロン茶に切り替える、生理前には控えるなど、工夫してみてください。

休肝日をつくる

肝臓は意外とタフで、2日ほど休ませると肝機能が回復します。晩酌をする人は、最低でも週2日は「休肝日」を作ってアルコールを節制しましょう。特に肝脂肪の疑いのある人は意識して。

現代はアルコールが多く消費されている

日本人のアルコール総消費量

国税庁のデータによると、2000年代に入ってからの日本人の1年間におけるアルコールの総消費量は、1970年代と比較するとおよそ2倍に増えていることがわかっています。流通の拡大や女性の社会進出など、飲酒を楽しむ層が広がったことに加え、ストレスの多い現代社会で日常的にお酒をたしなむ人が増えてきていることなども、アルコール消費量増加の理由として考えられるでしょう。

アルコールに弱い体質の人は多い

アルコールの消費量が増え、飲酒する層が広がっていく一方で、日本人には依然としてアルコールに弱い体質の人が多く、お酒による健康被害も問題視されています。実際に生活習慣病としての肝機能障害によって亡くなる人は多く、日本人の死因の第4位となっているほどです。

アルコールに弱い体質の人は肝臓でアルコールを分解する能力が弱いため、日常的に大量のアルコールを摂取することで肝臓がダメージを受けやすいことが大きな原因と言われています。

代表的なアルコール性肝臓病

肝臓病は、大まかにウイルス性のものとアルコール性のものとに分けられます。このうち、アルコール性肝臓病は飲酒量・飲酒期間が長ければ長いほど、肝臓病を発症するリスクが高まることが特徴です。

脂肪肝

日常的に飲酒をしている人にまず起こりやすいのが脂肪肝です。脂肪肝は肝臓に脂肪を蓄え過ぎている状態であり、脂質の摂り過ぎや糖尿病などが主な原因になります。アルコールによる脂肪肝は、アルコールを控えることによって改善しやすいことが特徴です。

通常、脂肪肝にはこれといった自覚症状はなく、検診時の検査で見つかることがほとんど。よくお酒を飲む人は定期的に検診を受けることが脂肪肝予防につながるでしょう。

アルコール性肝炎

飲酒によって脂肪肝の状態になっているにもかかわらず大量の飲酒を続けていると、アルコール性肝炎の発症リスクが高まります。アルコール性肝炎を発症すると、黄疸や腹痛、発熱といった自覚症状が現れ、ひどい場合は死に至るケースも。

アルコール性肝炎の治療には禁酒が必須ですが、肝炎の診断が下りた時点でアルコール依存を抱えている人も多く、禁酒・断酒を守れないまま肝硬変へ進むケースも多いです。

アルコール性肝繊維症

アルコール性肝繊維症飲酒によって肝臓や肝機能に障害が起こると、ダメージを受けた部分を修復する際に、肝臓が繊維化するアルコール性肝繊維症が起こることがあります。ただしアルコール性肝線維症と診断されても、飲酒を控えることで繊維は組織に吸収されるため、症状が軽い場合は改善可能です。

とは言え肝繊維症になっても飲酒を続けていると、繊維化が更に進んでしまうため、肝硬変のリスクが高くなります。

肝硬変

肝臓の繊維化が進み、肝臓が硬く変化してしまった状態を肝硬変と言います。肝硬変は肝機能障害の最終状態とも言われており、放置していると命にかかわる可能性が高い病気です。

重症になると吐血や腹水といった症状も見られる深刻な状態ですが、肝硬変と診断されたからといって、諦めることはありません。禁酒を守り、病院で治療を受けることで、症状の改善が期待できます。またアルコール依存がある場合は、肝硬変の治療と並行して依存症治療も続ける必要があるでしょう。

肝臓は物言わぬ臓器

肝臓は「沈黙の臓器」「物言わぬ臓器」と呼ばれます。これは肝機能に何らかの障害が起こっていても自覚症状が現れにくく、日常生活では肝臓のダメージになかなか気づきにくいためです。そのため、自覚症状が出たときには既に肝臓病がかなり進んでいたり、重症化していたりするケースも多く「後悔先に立たず」となる場合も少なくありません。

肝臓をダメージから守って健康に保つためには、普段から肝機能を高める対策をしていくことが不可欠です。自覚症状がないからといって肝臓の機能を過信せず、上記で紹介した健康的な飲み方を参考にして、日ごろから肝臓をいたわり、意識して肝臓の負担を和らげていきましょう。

お酒を飲むと蕁麻疹が出る原因

ビールやワインなどお酒を飲むと蕁麻疹が出ることがあります。蕁麻疹とアルコールの直接的な原因ははっきりとわかっておらず、同量のアルコールを飲んだとしても、蕁麻疹が出る方もいれば、出ない方もいらっしゃいます。

お酒を飲むと蕁麻疹が出る原因として考えられる要因は、アルコールが血管を拡張し体温を上昇させることによる神経への影響です。これは、「コリン性蕁麻疹」と呼ばれるもので、発汗刺激に伴って誘発される点が大きな特徴です。

コリン性蕁麻疹は運動や緊張などの発汗刺激に伴い発症する刺激誘発型の蕁麻疹である.日中の活動時を中心に,発汗に伴いそう痒やチクチクとした刺激感を伴った小型の点状の膨疹,紅斑が出現する.まれにアナフィラキシーや血管性浮腫などの重篤な症状を呈することもある.コリン性蕁麻疹にはその病因,臨床的特徴からいくつかのサブタイプがあることが知られてきている.コリン性蕁麻疹の病因には,ヒスタミン・アセチルコリン・汗アレルギー・血清因子・発汗異常などが関与し,各サブタイプによって病因は異なると推定されている.

出典:「新・皮膚科セミナリウム 蕁麻疹治療のたどり来し道とこれから 1.コリン性蕁麻疹の新しい病型分類と治療」日本皮膚科学会雑誌,127(8),2017
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/127/8/127_1745/_article/-char/ja

また、一部のアルコールには、アレルギー反応を引き起こす成分を含んでいるものがあります。 例えばビールなどのアルコール飲料には、亜硫酸が保存のための酸化防止剤として使われていることがあります。亜硫酸過敏症によりアレルギー反応を引き起こされるケースもあります。

亜硫酸塩(sulfite)は、酸化防止剤として食物、飲料のみならず薬剤にも広く使用され、呼吸器疾患治療薬にも一部含まれている。〜中略〜sulfiteに対する過敏症は欧米ではよく知られているが,本邦ではまだその報告は少ない

出典:「成人気管支喘息と食品アレルギー : 第3報亜硫酸塩(Sulfite)過敏症」アレルギー,47(11),1998[PDF]
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/47/11/47_KJ00001611312/_pdf/-char/ja

さらに、アルコールそのものがアレルギーの原因となっている方もいます。俗に言うアルコールアレルギーの方は、お酒のみならず、アルコールが配合された化粧水などの化粧品、食品に対してもアレルギー反応が出る場合があります。また、お酒の中にはワインのように蕁麻疹を引き起こし、血管を拡張させることのある物質「ヒスタミン」を多く含んでいる食品もあります。

また、肝炎など肝臓の疾患が免疫機能に影響を与えて、蕁麻疹を発症させることもあるようです。

このように、お酒を飲むことで蕁麻疹が出る原因は実に様々です。
アルコールそのものにアレルギー反応を示しているのか、一緒に食べたおつまみが原因なのか、はたまたアルコールで血管が拡張し、蕁麻疹が出やすくなったのかなど、慎重に判断する必要があります。

蕁麻疹と肝炎の関係

また、慢性C型肝炎や肝硬変の方の場合、HCV(C型肝炎ウイルス)腎症を発症し、蕁麻疹や関節炎、発熱などが出る場合があります。これは、肝疾患に伴う、免疫機能の異常が原因となって、腎疾患を発症。血管細胞成分などにクリオグロブリンが沈着。全身性のクリオグロブリン血管炎を引き起こすことが原因と考えられています。

肝炎が原因で蕁麻疹が出た場合、HCV抗体陽性患者であれば尿検査で蛋白尿や血尿がアルカドか、低補体血症状、結成クリオグロブリン・IgM型リウマチ因子の陽性反応があるかどうかなどを手掛かりに診断されます。

疑いがある場合には、MPGNの組織像やクリオグロブリンが糸球体内にあるかどうかなどを確認した上で確定診断が下されます。HCV(C型肝炎ウイルス)腎症が原因の場合は抗ウイルス療法などが用いられます。

慢性C型肝炎・肝硬変の経過中に尿異常所見を認める患者の一部に,MPGNの組織像,電顕的に基底膜内皮下に高電子密度沈着を認める特異的なHCV腎症を発症する.臨床的には,ネフローゼ症候群を呈すことが多く,腎予後も不良であることが多い24).発症機序は,HCV抗原に対する抗体(グロブリン)と抗グロブリン抗体やリウマチ因子で形成されるクリオグロブリン(低温で沈殿するグロブリン)の糸球体や血管の細胞成分への沈着が原因とされる25).全身性のクリオグロブリン血管炎を併発すると,発熱などの非特異的症状に多発関節炎,紫斑,Raynaud症状,寒冷蕁麻疹,皮膚潰瘍などの結合織疾患の症状を合併することもある.

出典:「3.内科医が知っておくべき腎臓と全身臓器とのインターラクション3)肝臓と腎臓」日本内科学会雑誌,100(9),2011[PDF]
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/9/100_2544/_pdf/-char/ja

飲む量を見極める

お酒に含まれるアルコールは、お酒の種類によっても異なります。例えば、同じエタノール22gを含むお酒の量はビールであれば大ビン1本、日本酒は1合、ウイスキーならダブル1杯分に相当します。

アルコールの代謝はそのほとんどが肝臓から代謝されます。腎臓や呼気、尿からも排泄されますが、いずれも5%からそれ以下と微量。そのため、肝臓がアルコールを代謝できる許容量を超えない範囲で飲まなければ、当然身体に害を及ぼします。

例えば体重が60〜70kgの方のアルコール処理能力が1時間あたり純アルコールで5gだった場合。ビール大ビン1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯分をそれぞれ代謝するためにかかる時間は4時間程度はということになるのです。

ご自身のアルコール代謝率は、次の計算式で計算できます。
アルコール代謝率=100〜200mg/kg(体重)/時間(H)

お酒に弱い方は代謝率を100 mg/kg(体重)/時間(H)、強い方は200 mg/kg(体重)/時間(H)として考えてみるといいでしょう。

この計算式に当てはめれば、アルコール代謝能力が1時間あたり100mgのお酒に弱い方の場合、体重60kgの人が代謝できるアルコールの量は1時間あたり約6g。それ以上のアルコールを飲めば、体の中ではアルコールが代謝されきるまで血中アルコール濃度が高い状態が続いてしまうのです。

お酒を飲む場合には、上記の計算式で、自分がどのくらいのお酒を飲めるか計算してみるのも、飲む量を見極める参考になるでしょう。

参考:「肝疾患を診たら 5. アルール性肝障害-チエツクポイント」医療,44(5),1990[PDF]
https://www.jstage.jst.go.jp/article/iryo1946/44/5/44_5_546/_pdf/-char/ja