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疲れをためない

Method

疲れはその日に解消して肝機能を改善 肝臓と疲れは密接な関係があり、体が疲れると肝臓が疲れ、さらに肝臓が疲れたことで、全身疲労を増長させて、悪循環に陥ります。肝機能を改善するには、疲れをためないこと。肝臓と疲れのメカニズムについて、詳しくみていきましょう。

肝臓と疲れは
密接な関係がある

肝機能障害の症状の一つに、だるさや倦怠感等の全身疲労があります。肝臓は有害物質の分解や、糖・タンパク質・脂肪の代謝、胆汁の生成・分泌の役割を持つ重要な臓器です。再生能力が高く、非常にタフな臓器ですが、全身に疲れがたまっていると、正常に機能できなくなります。
朝起きてから就寝するまで、食事や仕事、運動等、私達は様々な活動を行っています。この時、体内では、様々な老廃物が発生し、肝臓の働きで、体外に排出したり、脂肪に蓄えられます。1日の活動時間が長くなるほど、肝臓はエネルギーを消耗するようになり、肝機能が低下してしまいます。
睡眠時間が十分に取れなかったり、暴飲暴食、強いストレス、過度な運動をすると脂肪が沈着したり、肝臓を酷使することになります。肝機能の低下にもつながり、本来の解毒や代謝ができなくなるのです。そのため、エネルギー不足に陥ったり、体内に毒素が蓄積されて、疲れやすくなってしまいます。言い換えると、肝機能を回復させるには、生活のリズムを見直して、十分な休息と睡眠を取り、疲れをためないことが大切です。

肝臓の疲れと体の疲れ

全身の疲れと肝臓の疲れは相互に影響しあっています。体が疲れると肝臓が疲れます。そして肝臓が疲労するとさらに体の疲労を増長させる、スパイラルに陥ります。そのメカニズムをみていくと、次のようになります。

その1 アンモニアの増加による影響

肝細胞の細胞内にあるミトコンドリアは、「ATP」というエネルギーの産出と、人体に有害なアンモニア・アセトアルデヒドを除去する働きがあるDNAです。
アンモニアは、食物から摂ったたんぱく質が分解された時に発生する成分です。「ATP」は生命活動の原動力となるエネルギーで、これを産出するには、ミトコンドリアの中にある、「TCAサイクル」を正常に機能させる必要があります。この時、アンモニアの量が多いと、「TCAサイクル」が阻害されて、「ATP」の産出量が減って、大量に使われてしまうのです。アンモニアを分解すれば、「ATP」の需要と供給バランスが正常になりますが、体が疲れていると、肝臓の働きが弱まって、全身疲労になりやすいと、考えられます。

その2 アルコールによる影響

「ATP」の産出を妨げる、もう一つの要因に、アセトアルデヒドがあります。アセトアルデヒドは、アルコールを分解するときに発生する物質です。アンモニアと同じ有害物質で発生すると、ミトコンドリア等の大切な細胞を傷つける恐れがあると考えられています。これが「ATP」の生成を阻害して、全身疲労を引き起こす、原因の一つといわれています。

肝臓が疲れていると現れる症状

沈黙の臓器と言われる肝臓ですが、疲れが溜まると様々な症状を体のサインとして発します。体が疲れていると、疲れのせいだとついつい見逃しがちな症状も、肝臓に負担がかかっているのが原因かもしれません。次のような症状が見られたら、「肝臓が疲れているかな?」と少し肝臓のことをいたわってあげましょう。

朝の起床時に気分が悪い/目覚めが悪い

アルコールなど体内に含まれた毒素を中和し、排出してくれる働きのある肝臓。肝臓が疲れていると、毒素の分解が滞ってしまいます。肝臓が毒素を中和してくれるものの一つが乳酸です。乳酸は血液中濃度が高くなると体が疲れを感じます。

そのため、肝機能が低下し、乳酸をグリコーゲンに変える働きが弱まり、睡眠を取っても疲労感が抜けず、朝の目覚めも悪くなってしまうことがあります。

参考: MSDマニュアル家庭版「肝臓」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/04-肝臓と胆嚢の病気/肝臓と胆嚢の生物学/肝臓

寝つきが悪く、悪夢にうなされることがある

肝臓では、糖をグリコーゲンとして貯蔵し、睡眠時など食事を長時間しない際に必要に応じて貯蔵しているグリコーゲンをブドウ糖に分解、血糖値を正常に保つ機能を持っています。

肝機能が低下するとこの機能がうまく働かなくなり、夜間低血糖になる場合も。夜間低血糖になると悪夢を見たり、寝つきが悪くなったり、朝起きた時に頭痛がするなどの症状が出ることがあります。

参考:「症例報告 食後数時間での著明な低血糖を主訴とし,慢性B型肝炎・肝硬変の影響が疑われた1例」糖尿病,57(9),2014(PDF)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/57/9/57_714/_pdf/-char/ja

参考:MSDマニュアル家庭版「肝臓」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/04-肝臓と胆嚢の病気/肝臓と胆嚢の生物学/肝臓

食欲がなくだるい。夕方になると疲れやすい

肝臓に何らかの障害が生じると、食欲低下や体のだるさなどの症状を訴えることがあります。症状が重いと、吐き気や悪心などが生じる場合もありますので、休んでも疲れが抜けない場合には要注意です。

大好きだったお酒や脂っこいものを、体が受け付けないと感じるのも肝機能が低下しているサインかもしれません。

参考:MSDマニュア プロフェッショナル版「肝疾患を有する患者の評価」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/02-肝胆道疾患/肝疾患を有する患者へのアプローチ/肝疾患を有する患者の評価

膨満感や足のむくみがある

肝臓がんの初期症状として腹部の膨満感や食欲減退などが現れることがあります。また、肝硬変でも下腹部に水がたまり腹部全体が膨満することがあります。また、肝臓で生産される胆汁の量が肝機能低下によって減ってしまえば、肝臓の消化機能や毒素・老廃物を除去する機能が低下。体にむくみを生じることもあります。

顔色が黄色っぽい

肝硬変の症状として知られているのが、皮膚や目が黄色っぽくなるという症状です。

黄疸と呼ばれるこの症状は、血中のビリルビン色素が増加することで引き起こされます。ビリルビン色素の血中濃度が高まる理由として考えられるのが、肝細胞の障害や、胆汁の流れが阻害されてしまっているケースです。

肝細胞性黄疸は、脂肪肝や肝炎、肝硬変、肝がんなどが疑われる症状です。早めに病院で検査をしてみましょう。

参考:国立がん研究センター「黄疸(おうだん)」
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/attention/skincare/jaundice.html

尿が褐色だ

肝臓や胆管、膵臓の病気により胆汁が鬱滞すると、皮膚にかゆみが生じたり、顔色が黄色っぽくなるほか、尿の色が濃くなるなどの症状が現れます。ビリリビンという色素が腎臓から過剰に排出され、尿の色が濃くなる一方で、逆に腸内へのビリルビン経路がふさがることにより、尿の色が薄くなるケースもあります。

尿の色がいつもと違うな、と思ったら、肝臓が何かのサインを出しているのかもしれません。

参考: MSDマニュアル家庭版「胆汁うっ滞」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/04-肝臓と胆嚢の病気/肝疾患の症状と徴候/胆汁うっ滞

疲れを放置するのは危険

体の疲れを無視してそのまま過ごしてしまえば、肝臓に様々な負担をかけます。肝臓は、再生力の高い臓器と言われる一方で、機能不全が進んでもなかなか自覚症状が現れにくい“沈黙の臓器”とも言われています。気がついた時には症状が重篤…という事態にならないように、日頃から疲れをこまめにリフレッシュすることが大切です。

実際に、疲れを放置して引き起こされる肝臓の病気には、どのようなものがあるのでしょうか?

脂肪肝

脂肪肝とは、文字通り肝臓に余分な脂肪が蓄積され過ぎている状態です。脂肪肝はアルコールを大量に摂取している人がなりやすいとされてきましたが、最近では食べ過ぎや、食事に対して消費エネルギーが少ないために脂肪肝になる人も増えています。

脂肪肝になる主な原因と症状は下記の通りです。

原因
  • 食べ過ぎ(過食)
  • 多量の飲酒
  • 栄養障害、薬の副作用
  • 糖尿病や高血圧など、生活習慣病による合併症
症状
  • 倦怠感、腹部の違和感など(自覚症状がない場合もあり)

アルコール性肝炎

長年にわたって日常的に多量なアルコール摂取を続けた人が発症する肝炎のことを、アルコール性肝炎と呼びます。治療や対策をしないで放置していると、肝臓がんや肝硬変へと進みかねません。

アルコール性肝炎の原因と症状は下記の通りです。

原因

  • 飲酒(アルコールの摂取量と飲酒していた期間で診断される)
症状
  • 倦怠感、だるさ
  • 発熱・むくみ
  • 黄疸、褐色尿
  • 上腹部の違和感、痛みなど

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、肝炎を起こすウイルスへの感染によって起こる肝炎です。アルコールや生活習慣に関わらず、ウイルス感染によって急性の肝炎症状が見られます。

原因

肝炎ウイルスにはA型・B型・C型・D型・E型の5種類があり、感染経路は下記の2種類です。

  • B型・C型・D型:血液や体液を介した感染
  • A型・E型:飲食物による経口感染
症状
  • 黄疸
  • 発熱
  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 嘔吐など

適切な治療を受ければ過度な心配は不要ですが、重篤な場合命に関わることもあります。

肝硬変

過度なアルコール摂取やウイルスによる炎症などにより、ダメージを受けた肝臓を修復する過程で肝臓が線維化し、硬くごつごつと変化してしまう病気です。肝炎から肝硬変に進んでもなお、自覚症状がほとんどないケースも多いと言われています。

原因
  • ウイルス性肝炎(原因の大半はウイルス性による)
  • アルコール性肝炎(肝硬変への移行率が高い)
  • 自己免疫疾患
症状
  • だるさ、疲労感
  • 食欲不振、黄疸など

食生活など生活習慣から改善していこう

肝臓をいたわり、体の疲れが肝臓に悪影響を及ぼさないようにするためには、食生活や生活習慣の見直しが大切です。

例えば、肝臓をいたわるための食生活であれば、1日3食、規則的な食生活を心がけるとともに、食事量は腹八分目にしましょう。規則正しい食生活は体のリズムを整えます。また、肝臓が十分に働けるよう、必須アミノ酸を豊富に含んだ良質なタンパク質を摂るように心がけ柄、食事全体の栄養バランスも摂るようにしましょう。カロリーや塩分の多い食事やアルコールの飲み過ぎは、肝臓に負担をかけてしまいます。

肝臓は、脂質代謝が最も活発な組織であり,また血清リボタンパク質を合成する能力を持つ。従って,肝臓での脂質代謝の変化は血清脂質濃度を変化させる大きな要因である〜中略〜大豆たんぱく質や時グリセリドの脂質低下作用にも大豆タンパク質や時グリセリドの脂質低下作用にも肝臓脂肪酸代謝系の変化が関与することが明らかとなっている

出典:「食品成分による肝臓脂肪酸代謝と血清脂質濃度調節機能」日本食品科学工学会誌,48(8),2001 [PDF]
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1995/48/8/48_8_555/_pdf/-char/ja

また、肝臓に疲れを溜めないためにはストレスも溜めないことも大切です。ストレスにより自律神経が乱れると、肝臓をコントロールする副交感神経の働きも乱れ、肝臓にも負担がかかります。「ストレスが溜まっているな」と感じたら、お酒でストレスを発散するのではなく、ゆっくりお風呂に入るなど体をいたわる方法でストレス解消に努めましょう。