血液中には、ビリルビンという黄色の色素が存在します。ビリルビン濃度が上昇して、全身の皮膚や粘膜に色素が沈着した状態が「黄疸」です。
黄疸の特徴は、目や皮膚が黄色くなったり、濃い黄色の尿や灰色っぽい便が出たりすること。また、食欲不振や倦怠感を感じやすくなるといった症状もあります。
黄疸の原因は「血液中のビリルビン濃度の上昇」です。ビリルビンは、古くなった赤血球が壊れるときに発生。通常、血液から肝臓に運ばれる際に胆汁へ変わり、不要な分は尿や便と共に排泄されます。
ビリルビン濃度の正常値は1.0mg/dL以下。3.0mg/dL以上になると、体にさまざまな影響が現れます。濃度が正常値を上回る原因は「肝機能の疲労」。疲労によって機能が失われると、ビリルビン濃度が上昇して排泄が上手くいかなくなります。
そうなると、「解毒作用」・「エネルギー代謝」「神経伝達」の機能が失われてしまうのです。黄疸が発生した人の6~8割は、肝臓の疲労が影響しているというデータがあるほど。肝臓の疲労で失われる機能については以下です。
血液内に侵入したウイルスや細菌、異物を取り除く作用。解毒作用が低下すると、身体がだるくなり体内にウイルスや細菌が蓄積します。
炭水化物、脂質、タンパク質などのエネルギーに変える機能。エネルギー代謝が低下すると、食欲減退が見られる場合があります。
神経伝達が低下してしまい、身体に疲労やストレスが蓄積。うつ病のような精神疾患にも繋がります。
これらの機能が失われると黄疸が出る可能性が高くなります。次に黄疸から考えられる病気について見ていきましょう。
黄疸は、黄疸ができる原因によって「肝細胞性黄疸」「閉塞性黄疸」「溶血性貧血」「体質性黄疸」に分けられます。体質性黄疸は遺伝によるもので特に治療の必要ありません。ただし、肝細胞性黄疸や閉塞性黄疸、溶血性貧血は何らかの治療が必要となります。
肝細胞性黄疸の原因は、急性/慢性ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎、肝硬変、肝がんなど肝臓の疾患です。肝臓がこれらの病気によって広い範囲でダメージを受けていることを示す肝細胞性黄疸は、サインとなります。
腫瘍や結石により胆管が閉塞し、胆汁内に排出されたビリルビンが血液に漏れ出し黄疸を引き起こしているのが閉塞性黄疸です。閉塞性黄疸の場合、水筒部がんや胆管がん、肝がんなどが疑われ、診断のために画像診断が用いられます。 悪性腫瘍が原因となっていた場合には、外科手術による切除が。それが不可能な場合にはステント留置などによって治療が行われます。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス『黄疸』
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/attention/skincare/jaundice.html
健康診断でもチェックされるビリルビン濃度は、ここまで見てきたように肝機能が正常に作用しているかを測る一つの指標となります。黄疸の程度を測る数値としても使われ、ビリルビンが2.0mg/dLを超えていれば、ビリルビン代謝過程で何らかの異常があることが疑われます。
総ビリルビン濃度の基準値は「0.2〜1.2mg/dL」です。1.3〜5.0 mg/dLの場合には軽度ビリルビン血症が、5.1mg/dL以上の場合には中・高度ビリルビン血症と判定されます。 軽度ビリルビン血症された場合には、肝機能や設計級数などを再検査し、異常がないかを確認します。また、中・高度ビリルビン血症の場合には、肝臓や胆管の精密検査が必要となります。なお、10mg/dL以上の場合には、黄疸が進行し顔色が黒ずんで見えることもあり、入院精査となります。[1]
[1]参考:一般社団法人日本衛生検査所協会ウェブサイト『臨床検査AtoZ-検査項目と疾患(3)総ビリルビン』
http://www.jrcla.or.jp/atoz/rexm/rexm_03_08.html
黄疸原因や種類を見分けるのに有効な指標となる総ビリルビン値は、基準値より高いとほとんどのケースで肝臓の病気が疑われます。ビリルビン濃度が高いということは、血液中の寿命がつきた赤血球から生成される胆汁色素ビルビリンが胆汁内に廃棄され、本来であれば肝臓の機能として胆汁から排出されるはずが、胆汁うっ滞が生じて血液中に漏れ出している可能性が高くなります。肝硬変が進展し肝不全が進めば、肝臓内の胆汁の流れが悪くなり、ビルビリン値が上昇してしまうのです。
血中ビリビリン濃度が高くなると、英人の場合黄疸以外にも胆汁を分解する際に生じる物質が体内に蓄積。かゆみを引き起こすことがあります。成人の場合、血液中のビルビリン濃度が高くなり黄疸ができる現象自体はそれほど体内に深刻な症状をもたらすものではありません。ただし、黄疸を引き起こす肝臓疾患が深刻なダメージを身体に与えている可能性は決して否定できないのです。[2]
[2]参考:MSDマニュアル家庭版『成人の黄疸』
http://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/04-肝臓と胆嚢の病気/肝疾患の症状と徴候/成人の黄疸
急性肝炎とは、肝臓がウイルスに感染して起こる急性の肝機能障害。肝細胞が急激に壊されてビリルビン値が上昇すると、急性肝炎になる可能性が高いです。黄疸だけでなく、食欲不振・吐き気・嘔吐・倦怠感などの症状も現れます。
急性肝炎の中でも、特に重度なものを劇症肝炎と言います。肝機能が著しく低下した状態で、「肝性脳症」や「肝性昏睡」などの意識障害も引き起こす可能性が高いので注意が必要です。
肝臓が固く小さくなる症状を肝硬変と言います。肝臓へのウイルス侵入や大量のアルコール摂取によって発症。肝硬変になると、血管が破壊されます。また、進行が進むと肝臓がんを引き起こす可能性のある病気です。
黄疸により、肝機能以外で考えられる病気を紹介していきます。
胆のうはすい臓の下にあり、胆汁を溜めておくための臓器。胆のうがんは、初期の段階で症状を感じにくいのが特徴です。黄疸が現れたころには、がんの症状が進行している可能性が高いため、発見次第すぐに治療を受けましょう。
すい臓は、胃の後ろにある20センチほどの細長い臓器。胃や背中への違和感や腹部の調子が悪いと、すい臓がんの可能性があります。一緒に糖尿病を引き起こす場合もあるので、要注意。
肝臓から十二指腸まで胆汁が通る「胆管」に石ができる病気です。初期症状では、腹部右上の痛み、吐き気や嘔吐が現れます。黄疸が出るタイミングは、胆管が完全に塞がってから。初期症状で、気付けるよう、注意が必要です。
黄疸が発症した場合は、重い病気にかかっている可能性高大。早急に病院へ行き、消化器科で検査を受けるようにしてください。問診・採血・CTレントゲンなどの画像検査で原因と病気の進行を調べてくれます。
急性肝炎・劇症肝炎・肝硬変・総胆管結石症は、消化器内科で治療を実施。肝臓科を開設している病院があればそこでも治療をしてくれます。
肝臓がん・胆のうがん・すい臓がんの場合は、がんを切除する必要がある場合も。そのため、消化器内科・外科と両方行っているところがベストです。
もし症状が現れても早期発見できれば、大事に至る前に病気の進行を抑えられます。定期検診で、普段から身体の状態をチェックしておきましょう。