肝機能検査でわかる血清尿酸値でわかる病気とは?

Rational symptom

血清尿酸値

肝臓が分解したプリン体の老廃物が尿酸
尿酸とは、食べ物に含まれているプリン体を肝臓が分解する際に生じる老廃物です。尿酸値が高いことで引き起こされる病気として痛風があるというのは、知っている方も多いのではないでしょうか?

血清尿酸値とは?

血清尿酸値とは、血液の血清と呼ばれる液体成分中にある尿酸の濃度です。哺乳類では尿酸は肝臓にある尿酸酸化酵素・ウリカーゼから分解され、腎臓から排出されるのですが、私たち人間やチンパンジー、ゴリラなどの霊長類はウリカーゼ遺伝子の機能が遺伝子変異で損なわれていることから尿酸はそのまま腎臓から排泄されます。

そのため、尿酸が腎臓から排泄する機能が低下してしまうと、血清尿酸値が高くなってしまいます。また、そもそも尿酸の元となるプリン体を多く食べ物から摂ってしまうことも血清尿酸値が高くなる原因となります。

尿酸は体内では有機酸(pK、値5.75)として存在,主に腎臓より排泄される.このためヒトでは腎臓における尿酸の排泄低下によりこう尿酸結晶をきたすと,痛風や尿路結石症などを効率に発症するなどの問題を生じる

出典:『ヒト肝細胞キメラマウスにおける血中ヒトアルブミン値と. 血清尿酸値の相関性』痛風と核酸代謝,32(1),2008

血清尿酸値の標準値

~7.0mg/dL

尿酸値は、健康診断や人間ドックなどで受ける血液検査からチェックすることができます。尿酸値は一般的に男女共に7.0mg/dL未満が基準値内となっています。[1]
血液検査の結果を記した紙には、正常値や基準値として男性は「3.8~7.5mg/dL」女性は「2.4~5.8mg/dL」と参考値が記載されています。

なお、尿酸値が低すぎると低尿酸血症と言って、腎障害や尿路結石の原因を引き起こすことも。低尿酸血症は、2〜1,0mg/dL以下のケースを指します。[2]

[1]

参考:『2.合併症のある高血圧の治療5)高尿酸血症』日本内科学会雑誌,100(2),2011

[2]

参考:『II. 膜輸送体蛋白と尿細管機能異常の進歩 6. 低尿酸血症』日本内科学会雑誌,95(5),2006

血清尿酸値が高いと発症する病気

血清尿酸値が高い場合、高尿酸血症の発症リスクが高まります。高尿酸血症は、尿酸値が7.0mg/dL以上の状態を指します。生活習慣病の一つとしても知られる病気で、日本国内で500万人ほどの患者がいると推計されています。その多くが中高年の男性に多く、閉経後の女性でも高尿酸血症になるケースが多く見られます。

高尿酸血症の原因

血清尿酸値が高い高尿酸血症は、高コレステロール血症や、高中性脂肪血症、肥満、高血圧などを合併していることが多く、高コレステロール血症の方の半数が高尿酸血症という統計もあります。
このように、高尿酸血症は生活習慣病と合併しているケースが非常に多く、生活習慣が高尿酸血症の原因であると考えられています。

成人男性における高尿酸血症の頻度,高尿酸血症と他の生活習慣病 との合併状況を調査した 当教室の成績では,当大学の人間ドックを受診した成人男性例5,227例において,高尿酸血症(血 清尿酸値7.0mg/dLを超えるもの)は1,162例(22.2%)に認められた。さらに,高尿酸血症症例 における他の生活習慣病の合併の検討では,高コレステロール血症を49.3%に,高中性脂肪血症を44.6%に,耐糖能異常を23.5%に,肥満を22.6%に,高血圧を17.2%に認め,高尿酸血症症例で は他の生活習慣病を高率に合併していることが明らかとなった。〜中略〜さらに、生活習慣病の合併数と高尿酸血症の関連を見ると,生活習慣病の合併数と高尿酸血症の頻度及び血清尿酸値は有意に相関していた。以上のことから、高尿酸血症は生活習慣病と密接に関連していることがわかる。

出典:『高尿酸血症』日本未病システム学会雑誌,14(1),2008

高尿酸血症が引き起こす病気

では、高尿酸血症になると、一体どんな悪影響が体に及ぼされるのでしょうか?まず挙げられるのが、痛風です。その他にも高血圧や腎疾患なども高尿酸血症の発症路関連の深い病気です。また、女性の場合は高尿酸血症が末期腎不全を進展させるリスクとなりえますので、女性でも高尿酸血症には要注意。

また、腎臓の病気以外にも、毛生尿酸値が高いと心筋梗塞や脳梗塞などの発症と深く関係していると考えられています。例えば、血清尿酸値が高い方(男性で7.6mg/dL、女性で6.2mg/dL以上)の場合、心血管系の病気の発症リスクが高まるという報告もあります。

高尿酸血症は血管平滑筋細胞増殖,COX-2産生の充進,血管収縮,炎症,RA系の充進,NO系の低下を介 して腎内血管病変,全身性および糸球体高血圧を来し,腎障害の発症・進展に関与する。また,同時 に高尿酸血症は内皮細胞障害を介して心血管疾患の進展にも関与する。これらが組織低酸素,細胞死,インスリン抵抗性を来し,細胞内でのキサンチンオキシダーゼの活性充進を介して尿酸の生合成につながってくる。高尿酸血症,高血圧,腎疾患の進展,心血管疾患が相互に関連していることは,これらが悪循環をなしている病態であると考えられる。

出典:『高尿酸血症』日本未病システム学会雑誌,14(1),2008

血清尿酸値が低いと発症する病気

血清尿酸値は高いと痛風などの病気を発症することで有名ですが、逆に低すぎる場合でも様々な病気が潜んでいたり、病気を引き起こしたりする場合があります。

通常、尿酸値はホルモンの影響で男性よりも女性の方が低い傾向にあります。ただし、尿産値が低すぎると「腎性低尿酸血症」という病気が疑われます。腎性低尿酸血症は、尿酸を体内で運ぶたんぱく質に遺伝子変異があることが原因と言われています。

健康診断などの際,しばしば低尿酸血症に遭遇する.この取り扱いとして,痛風をきたす高尿酸血症と異なり,以前は経過観察とすることが多かったが、近年,慢性低尿酸血症の合併症として尿路結石や運動後急性腎不全が報告されるようになり,管理が必要であることが明らかになってきた.

出典:『II. 膜輸送体蛋白と尿細管機能異常の進歩 6. 低尿酸血症』日本内科学会雑誌,95(5),2006

腎性低尿酸血症になると、合併症として尿路結石、運動後の急性腎不全などが引き起こされるリスクが高まります。尿路結石は、腎性低尿酸血症の方の10〜25%程度で見られ、生後15か月の赤ちゃんの症例も報告されています。また、運動後の急性腎不全は腎性低尿酸血症の方の10%程度に見られるという報告があります。

日本では、腎性低尿酸血症の発症頻度は0.14〜0.7%程度です。かつては尿酸値が低くてもそれほど問題ないとされていましたが、このように近年新たな病気もわかってきているのです。

参考:『II. 膜輸送体蛋白と尿細管機能異常の進歩 6. 低尿酸血症』日本内科学会雑誌,95(5),2006

血清尿酸値の治療薬について

では、高尿酸血症にはどんな治療方法があるのでしょうか?
高尿酸血症の治療には、生活療法が基本となりますが、生活指導を受けてもなお血清尿酸値が下がらない場合には、薬物療法をとることとなります。ちなみに、高尿酸血症の治療が必要となる目安は、8mg/dL、正常値の上限は7mg/dLで、治療開始後の目標となる値は6mg/dLとなります。

尿酸生成抑制薬

尿酸生成抑制薬(アロプリノール)は、尿酸算出過剰型の高尿酸血症で用いられる薬です。尿路結石がある方や、過去に尿路結石があった方の治療にも用いられます。尿酸生成抑制薬は、プリン体が体内で尿酸に分解される際に作用する酵素の働きを抑制することで、体内の尿酸量を減らす薬です。
尿酸生成抑制薬の副作用には、次のようなものがあります。

  • 肝機能障害
  • 皮疹
  • 消化器症状(食欲不振、胃痛、下痢、吐き気)
  • 白血球減少
  • 発熱

また、腎不全の方は、症状が服薬によって悪化するケースも考えられます。医師の処方にしたがって正しく薬を飲むようにしましょう。

尿酸排泄促進薬

尿酸が尿細管で再吸収されるのを抑制して、尿中により多くの尿酸を排泄させる薬・尿酸排泄促進薬には、プロベネシド、ベンズブロマロン、ブコロームなどがあります。ベンズブロマロンは尿酸を下げる薬の中でも最も強力な薬の一つです。服薬から6時間で血中濃度が最も高くなり、以後12〜28時間程度作用が続きます。そのため、1日1回の服薬で済む点も多く使われている理由の一つです。

尿酸排泄促進薬の副作用としては、尿路結石が挙げられます。
そのため、尿酸排泄促進薬を服薬する際には、尿路結石を予防するために、尿アルカリ化薬が一緒に処方されます。

参考:『尿酸降下薬の作用と副作用』痛風と核酸代謝27(1),2003

血清尿酸値にならないために気を付けたい食べ物(飲み物)

高尿酸血症を未然に予防するためには、何と言っても普段の食生活や運動習慣など生活習慣の改善が不可欠です。食生活の面では、アルコールを控え、1日3食の規則正しい食事を心がけるといいでしょう。
プリン体が多く含まれるビールや肉類は少なめにし、野菜や海藻類などアルカリ性食品を積極的に摂るようにしましょう。
また、尿をたくさん排出するために、お茶や水などの水分を積極的に飲むといいでしょう。