肝臓の重要な働きである「貯蔵」とは

肝臓の仕組み
を解説

肝臓の仕組みと貯蔵の働き
肝臓の働きの一つに貯蔵があります。貯蔵によって私たちの身体の健康が保たれていますが、どのような働きがあるのでしょうか。代謝の仕組みや働きについてまとめています。

貯蔵とはどのような働きか

肝臓は、体内の化学工場といわれるように、様々な役割を担っています。その一つが「貯蔵」です。肝臓には、脳の働きに必要な、ブドウ糖(グルコース)を供給する働きがあります。脳は24時間休みなく栄養を必要としています。そこで肝臓では、いつでもブドウ糖の供給ができるように、グリコーゲンとして貯蔵しています。食物から吸収した脂肪分や糖分、たんぱく質・グリコーゲン・脂肪に分解・合成して、蓄えておき、不足した時にエネルギーとして消費します。

肝臓での三大栄養素の貯蔵

肝臓は三大栄養素である糖・脂質・たんぱく質をどのように貯蔵しているのでしょうか?

血液の貯蔵

肝臓には、血液を貯蔵する働きもあります。体内に流れている血液は、体重の約13分の1にあたるといわれ、体重60kgの人で約5ℓに相当するといわれます。そのうち肝臓には、全血液量の10分の1が蓄えられているそうです。肝臓は状況に応じて伸縮できるので、さらに500ml~1ℓの血液を余分に貯蔵することができます。こうして蓄えられた血液は、出血などで血液不足に陥った時に、それを供給して血液不足を解消する役割があります。

肝臓の「貯蔵」機能を担う肝星細胞

肝臓で貯蔵機能を担う細胞の一つが、「肝星細胞」と呼ばれる細胞です。星のような形をしていて、肝臓の代謝や合成活動に携わっています。肝星細胞は、ビタミンAを貯蔵する細胞として知られ、体の中にあるビタミンAの約8割が肝星細胞に貯蔵されています。
また、肝星細胞はコラーゲン線維を作り出す働きを持ち、肝硬変や肝炎の発症にも実は関わりが深い細胞です。肝星細胞が活性化すると、溜め込んでいたビタミンAを放出。代わりにコラーゲン線維を作り出します。肝臓が傷ついた際に、肝臓の細胞を補修する役割を担ってくれるのはいいのですが、活性化しすぎると肝硬変を引き起こしてしまう細胞でもあるのです。[1]

また、肝臓は、再生力が強い臓器。仮に肝臓の85パーセントが壊れてしまっても働き続けることができると言われています。肝星細胞はそんな肝臓の再生にも深く関わっている細胞でもあります。

肝星細胞の働きは、まだまだわかっていないことも多く、研究者の間でも盛んに研究が行われています。京都大学が2015年に発表した研究では、肝星細胞が肝炎の炎症反応を調節することもわかっています。[2]
ただ単に栄養素を貯蔵するだけでなく、肝臓の病気に深く関わる肝星細胞。今後、肝炎など肝臓の病気を治す治療法の開発において、大きな鍵を握る細胞として注目されています。

[1]参考:肝細胞研究会 研究交流『肝臓星細胞の不思議』(2018年1月31日確認)
http://hepato.umin.jp/kouryu/kouryu15.html

[2]参考:京都大学 研究成果『ビタミン A を貯蔵する肝星細胞が肝臓の炎症を制御していた -肝炎、肝硬変、肝癌の予防や治療法開発に期待-』2015
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/documents/151013_1/01.pdf

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