肝硬変の原因は本当に肝炎ウィルス!?
肝硬変は脂肪肝等、肝臓の機能の悪化が引きおこす病気です。肝炎ウィルスが原因ですが、そのほかにも理由があるようです。肝硬変とはどのような病気でしょうか。症状や予防・改善方法などと併せてみていきましょう。
肝硬変は肝臓が硬くなって機能低下する病気
肝硬変は肝臓が硬くなり、正常に機能できなくなる病気です。アルコールの過剰摂取やウィルス感染等で肝臓がダメージを受けると、タンパク質の繊維が分泌されて再生しようとします。肝臓全体に繊維が広がって、肝臓が硬くなり、肝硬変になります。肝硬変になると肝臓の血液循環が悪くなり、正常な働きができません。悪化すると、腹水が溜まったり、黄疸や肝性脳炎等の症状があらわれます。
代表的な初期症状です。胆汁の分泌や胃の血流が悪くなったり、胃が肝臓に圧迫されて食欲が減退します。
肝機能が低下すると解毒できなくなり、体内に毒素が溜まったり、エネルギー不足で疲れやすくなります。
肝機能が低下して胆汁の分泌が低下すると、食欲が減退して体重も減ります。
皮膚や白目が黄色くなる特徴的な症状で、血液中のビリルビンという色素が異常に増加しておきます。
タンパク質の合成が上手くできなくなり、体内の水分が増えて下半身や下腹部等、全身にむくみがあらわれます。
お腹に水がたまる、肝硬変の特徴的な症状。長期的な慢性疾患の人に起きやすいといわれます。
手のひらの特定の部分が不自然に赤くなってしまう症状で、特に親指の付け根付近の膨らんだ部分によく見られます。
顔や胸の上部、肩などに、盛り上がった発疹ができ、中心部から毛細血管がクモの足のように放射状に広がる症状です。
先ほども説明した通り、肝硬変に特徴的な身体的症状はいくつかあるのですが、そのいずれも、肝硬変の初期症状としては出てこない場合が多くあります。肝硬変が起こっているかどうかを見分けるには、さまざまな検査が必要です。肝硬変と診断するための検査について紹介します。
血液検査では、多くの値が肝硬変を判定する材料となります。一覧形式でその情報をまとめますので、自分の血液検査の結果が気になっている方は確認してみてください。
検査値の名前 | 肝硬変疑いの目安 | 値の説明 |
---|---|---|
アルブミン | 3.5 g/dL以下の低下 | 肝臓で作られるタンパク質 |
血小板数 | 10万/mm3以下 | 血を止める作用のある血球のひとつで肝臓の機能が悪くなると減少 |
コリンエステラーゼ | 低下 | アルブミンと同じく肝臓で作られるタンパク質 |
プロトロンビン時間 | 長くなる | 血液が固まるまでの時間。血小板数が減るとともに血が固まりにくくなるため、血が固まるまでの時間が長引く。 |
アンモニア | 増加 | 肝臓のアンモニア分解能力が低下して血液中に増える |
総ビリルビン | 上昇 | 黄疸を示す値で肝硬変が起こると上昇 |
M2BPGi | 上昇(肝硬変の原因となる病気により基準となる値が異なる) | 2015年から保険で認められるようになった肝線維化の新規血清マーカー。B型・C型慢性肝炎や非アルコール性脂肪肝の病状が進むと上昇 |
ひとつの値が変化しただけではその原因を肝硬変と特定することは困難ですが、これらの値がセットになって肝硬変を示す値に変動していれば、肝臓に何らかの問題が起こっていることが分かります。
血液検査の変化について総括すると、肝臓が繊維化すると肝臓のタンパク質を生成する能力が落ちてくるため、アルブミンやコリンエステラーゼといった血中タンパク質の値が低下する点がまず挙げられます。また、血小板が少なくなり、血が固まりにくくなるので出血すると血がなかなか止まらない状態になりつつあることも血液検査で確認できます。
肝臓の分解能力が下がって血液中のアンモニア量の増加は、肝性脳症(かんせいのうしょう)という重い症状を引き起こす原因のひとつとも言われています。
このように、肝硬変はさまざまな数値を変化させるため、血液検査は肝硬変かどうかを見分ける上で最初に受けるべき検査とも言えるでしょう。
腹部超音波検査だけでは肝硬変かどうかを診断できません。ただ、肝硬変の疑いがある検査結果はいくつか得られる有用な検査です。検査で注目するべき点は、以下の5点です。
異常血管ができる理由は、肝臓が硬くなり門脈(門脈)と呼ばれる血管の圧力が高くなるためです。これらの所見があると肝硬変の疑いは高くなります。超音波検査自体は検査を受ける側には特に負担はなく、ただ横になっているだけで大丈夫です。ただし、患者が肥満の場合、超音波検査ではうまく見えない部分も多く、他の画像検査を併用して上記の内容を確認していきます。
超音波検査と同じような感じで、脇腹にプローブを当てて弱い振動波を出して検査します。振動波は硬いものには早く伝わり、遅いものには遅く伝わるという特性があるため、硬くなった肝臓を確認できるのです。この検査も患者側には大きな負担もなくリラックスして受けられます。
MRE検査では、MRI検査で使用する検査機器を使って振動波を流し、振動の速い部分と遅い部分を画像化して肝硬変の進行度合いを検査します。肥満の場合、超音波検査では見えづらい部分があるのですが、MRE検査の場合、肥満の度合いに関係なく体の内部まで確認可能です。また、MRE検査は、身体にメスを入れずに体の内部まで確認できる検査としても優れています。(京都大学大学院 情報学研究科 システム科学専攻 医用工学分野 松田研究室「MRIによる臓器の硬さの計測・解析 -」)
腹部のCT検査では、以下のことを確認して肝硬変診断の助けとします。
CT検査だけでは肝硬変と診断することは難しいため、あくまでも補助的な位置づけです。
腹腔鏡を使い、直接肝臓を確認する検査方法です。小さいながらもおなかに穴をあけるので、患者側に負担がかかる検査方法ですが、肝臓のデコボコした表面ははっきりと見えます。
肝臓に細い針を刺して組織の一部を採取し、顕微鏡で組織を確認する検査です。患者側の負担がかなり大きくなるため、肝硬変の検査では、超音波検査やMRE検査も行い、患者側の負担を可能な限り抑えるようにする工夫がなされている病院もあります。(慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト 「肝生検」)
(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター「肝硬変」)
門脈とは、腸管から来る静脈と脾臓から来る静脈とが合わさって肝臓に流れ込む、大きな静脈の通り道の呼び名です。この門脈を流れる血流が、何らかの理由で悪くなってしまい門脈自体に圧力がかかります。この状態が門脈亢進症で、原因は以下の3つに大別されます。
肝硬変による門脈亢進症は、主に肝内性で起こっています。原因の約95%は肝硬変が原因です。肝臓の組織が繊維化して硬くなり、門脈の血流を十分に受け入れきれなくなり、門脈に圧力がかかります。肝前性は、門脈自体に先天性の異常があって細くなっている状態で特発性門脈圧亢進症と呼ばれ、子どもに多い病気です。(特定非営利活動法人 日本小児外科学会「門脈圧亢進症」)
門脈亢進症が進むと、門脈を通過できないために肝臓を通過しない血管のバイパスができてしまい、肝性脳症の発症や胃食道の静脈瘤を作って破裂する危険性もあります。門脈亢進症の詳しい症状については次で紹介しましょう。
門脈亢進症の症状は、大まかに以下の通りです。
胃食道にできる静脈瘤は、悪化すると破裂して出血を起こし、肝不全などで死に至る危険性もある恐ろしい症状です。重い症状が出ていると、食事療法だけで症状を緩和することが難しくなるので、薬物療法を併用することになります。
薬物療法について
(山口大学大学院 医学系研究科 s消化器内科学(第一内科)診療部門紹介 「門脈圧亢進症・胃食道静脈瘤」)
(久留米大学病院内 福岡県肝疾患相談支援センター 「肝疾患について 肝硬変」)
肝臓は、栄養素の吸収や老廃物などの解毒、栄養をため込むなどさまざまな働きがあるため、肝硬変になるとそれらの機能が衰えてさまざまな部分に弊害を起こします。栄養代謝異常が多くなるのも肝硬変の特徴です。
肝硬変は、まだ症状が軽く障害を受けていない肝細胞が、障害を受けた細胞の分まで頑張って退社しているうちは代償性肝硬変と呼ばれ、自覚症状もあまりありません。それが、代謝をカバーしきれなくなるほど症状が悪化していくと非代償性肝硬変へと悪化し、先ほど説明した肝性脳症や腹水、黄疸などの症状とともに栄養代謝異常が起きてきます。
肝硬変の栄養代謝異常を具体的に説明すると、肝硬変では糖質をエネルギーとして使用する能力が著しく衰えます。すると、細胞内のタンパク質を分解してエネルギー源にするため、体内の蛋白エネル ギーが低栄養状態になります。この状態は、簡単な例で例えると、長期的に絶食して栄養が不足している状態に陥っているのと同じです。しかも、肝臓でタンパク質を生成する能力も落ちているので、体内のタンパク質不足は深刻となります。
さらに、肝硬変はアミノ酸や脂質の代謝異常も引き起こします。脂溶性ビタミン(A・D・E・K)や 亜鉛、セレンなどの微量元素も不足する場合が多く、栄養障害は深刻です。
(山口大学医学部附属病院検査部 是永 圭子など「栄養代謝異常の特徴 と栄養障害への対策」[pdf])
肝硬変を予防・改善する上で大切なことは、健康的な生活です。食事や運動はもちろんですが、飲酒やストレスも、肝臓に悪い影響を与えます。次にあげる4つのポイントを意識して、肝硬変を予防・改善しましょう。
脂肪・タンパク質を控えて野菜を多めにした、バランスの良い食事にし、1日3食の中で必要なカロリーを調整して摂るといいでしょう。
ウォーキングや早歩き等の、有酸素運動がベスト。1日30分以上、毎日続けると肝臓の脂肪が減って、肝硬変の改善効果があるといわれます。
アルコールを控えることは、肝硬変予防・改善で非常に重要です。日本酒1合でしたら、週に2日までが理想です。最低でも週1日は休肝日を作って。
ストレスがかかると、血液循環が悪くなり、肝臓に負担がかって疲れやすくなります。また免疫力が低下するので、ストレスをためないことが大切です。