肝臓の仕組み
を解説

有害物質を無毒化する解毒の働き

肝臓の働きの一つに解毒があります。解毒によって私たちの身体の健康が保たれていますが、どのような働きがあるのでしょうか。代謝の仕組みや働きについてまとめています。

解毒とはどのような働きか

解毒とは、体内の有害物質を無毒化して、体外に排出させる働きをいいます。体内には様々な物質が入ってきたり、生成されますが、その中には身体にとって有害な物質も少なくありません。こうした有害物質を分解して毒性を取り除き、身体に無害なものに変える働きを「解毒」といいます。身体にとって有害な物質はアルコールや薬、アンモニアなどがあります。肝機能が低下すると分解能力が低下して、アレルギーや中毒症状のような様々なトラブルを引き起こします。

肝臓の解毒作用が低下するとどうなる?

肝臓がアルコールやアンモニアなどの有害物質を解毒する作用が低下すると、いろいろな病気が引き起こされてしまいます。どんな病気があるかをまとめてみましょう。

肝性脳症

肝臓の解毒作用の低下で引き起こされる病気の中でもアンモニアの解毒作用が低下することで引き起こされるのがアンモニアの血中濃度が高くなる高アンモニア血症です。アンモニアは分子の大きさが小さい物質です。そのため、血液内のアンモニア濃度が高くなると、血液脳関門と呼ばれる、血液と脳の間の物質交換を制御する部分をくぐり抜け、脳神経にアンモニアが運ばれます。

その結果、アンモニアが脳神経にダメージを与え、急性期には意識障害・失禁・異常言動などの神経症状を引き起こします。これが肝性脳症と呼ばれる病気です。肝性脳症は、肝不全用の特殊組成アミノ酸輸液を行うことで症状が消失しますが、肝硬変など肝機能低下の原因を解消できなければ、再発の危険があります。

悪酔いや重い二日酔い

肝臓がアルコールを解毒できなければ、アルコールの毒性はいつまでたっても体内から消えず、二日酔いがひどくなったり、今までは平気だったお酒の量でも悪酔いしたりするようになります。お酒に弱くなったと感じているなら、肝臓の解毒作用が低下しているのかもしれません。

肝臓の解毒作用を高める方法

肝臓の解毒作用を高めるためには、当然ながら弱った肝臓を元気にする必要があります。解毒作用を高める方法には次のような方法があります。

食事療法

肝臓をいたわる食事療法は、肝臓の病気の予防にもつながります。
かつては肝不全の治療にはたんぱく質が少ない低たんぱく食がいいとされてきましたが、過度の低たんぱく食はカロリー不足や低栄養になることから、きちんとたんぱく質も摂取することが大悦という考えに変わってきています。[1]

また、高アンモニア血症を防ぐためには、アンモニアの血中濃度を上げないために、繊維質を十分にとり便通を整えることも有効です。[2]

[1][2]参考:『病気と薬 肝疾患シリーズ② 肝性脳症』

http://www.otsukakj.jp/med_nutrition/pallette/dlfile.cgi/19/v23p00.pdf

オススメの食べ物

肝臓に良いとされる食品には、枝豆や豆腐、納豆、しじみ、牡蠣、かぼちゃ、キャベツ、ニンニクなどがあります。中でも梅干しはクエン酸などを豊富に含み、肝臓のアルコール解毒作用を助けてくれます。
また、カカオや黒大豆、シナモンなどに多く含まれるプロシアニジンと呼ばれる成分には、感損傷を抑制する作用があることも最近の研究で明らかになっています。[3]

[3]参考:『プロシアニジンの機能性』山下・芦田, 化学と生物,54巻(2016) 10号

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/54/10/54_747/_pdf/-char/ja

肝臓で行われる解毒

身体にとって有害な物質は、アルコールや薬物、ウィルス、細菌など、様々なものがあります。またアンモニアのように、体内で生成されるものもあります。こうした有害物質は、解毒されて体外に排出されます。その中でもよく知られているのがアルコールとアンモニアの解毒機能です。各物質に対する、解毒のメカニズムを説明します。

1

アルコール

解毒効果で二日酔いを防ぐ

アルコールは、体内に入ると肝臓で処理されて、吐く息や尿とともに排出されます。アルコールを摂取すると、そのほとんどが、アルコール脱水素酵素によって分解されます。飲みすぎると、アルコール脱水素酵素だけでは分解しきれなくなるので、肝細胞の中にある、アルコール処理システム「MEOS(メオス)」で分解してアセトアルデヒドという物質に変換します。この物質は有害物質ですが、生成と同時に、アセトアルデヒド脱水素酵素を分泌して毒性のない酢酸に変わります。これが血液中に排出されて、吐く息や尿と一緒に体外に排出されます。肝機能が低下すると、アルコールの毒性が体内に残るため、悪酔いや二日酔いなどの症状が現れます。

2

アンモニア

分解して尿とともに排出する

アンモニアは主に腸内や腎臓でつくられ、血液中に放出されます。腸管内の細菌が作り出したタンパク質やアミノ酸が、腸内で消化・吸収されるとき、分解され、発生する成分です。腸内で生成したアンモニアが肝臓に送られると尿素に変換され、尿と一緒に排泄されます。しかしなんらかの理由で肝機能が低下し、血液中のアンモニア濃度が高くなると、肝性脳症等の意識障害につながる恐れがあります。アンモニアには神経毒性があり、神経細胞のエネルギー合成を低下させたり、神経伝達物質を低下させたりするためです。また便秘などで便が溜まっていると、何度も肝臓にアンモニアが運ばれ、肝臓が休みなく働き続けることになります。その結果、肝機能低下を招くこともあります。

体に良いはずの薬が肝臓に負担をかける!?

風邪薬や胃腸薬など、ドラッグストアで手に入る身近な薬ですが、もともとは毒性があり、ある意味では身体にとって有害です。それを解毒して毒性を取り除いてくれる肝臓には、実は想像以上に負担がかかっています。薬の効果が現れる時間は、肝臓の分解能力に左右されます。肝機能が低下すると分解スピードが遅くなり、効果が現れるまでの時間が長くなります。また薬によっては肝機能を低下させて薬物性肝障害を引き起こすこともあります。