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適度な運動をする

Method

適度な運動で効果的に肝機能を改善する 肝機能を改善するには、適度な運動を毎日続けることが大事です。ポイントは、少しずつでもよいので、毎日無理なく運動を続けること。適度な運動をすることで肝臓にもたらす良い影響と、肝機能を向上させる効果が期待できる運動法についてみていきましょう。

運動することで
脂肪肝は改善できるのか

肝機能が低下すると、様々な肝機能障害が引き起こされます。中でも代表的な症状が、肝細胞の中に脂肪がたまる、脂肪肝です。体脂肪を減らすと改善できますが、体重を落とすだけのハードな運動はかえって危険。医師の指導を受けずに行うと、肝臓に負担を与えかねません。カロリー不足になると、グリコーゲンを分解して、エネルギーに変えます。通常は、それで事足りますが、それでも足りない場合は、肝臓に蓄えている、タンパク質を糖に分解して、エネルギー源に変えてしまうため、肝臓に負担がかかります。早く脂肪肝を改善しようと焦って運動をしても、中性脂肪は一朝一夕に減りません。医師や専門家の指導を受けながら、肝臓に負担がかからない、ダイエットをしましょう。

おすすめの運動

肝機能を向上させるには、脂肪を燃焼させる運動により肝臓に脂肪がたまりにくい生活習慣を心がけることが大切です。脂肪肝を予防するのにオススメなのは、ウォーキングなど体の脂肪を燃焼させる有酸素運動です。

筑波大学の研究者らが行った、食事・運動療法に取り組む肥満成人男性を対象の研究では、3ヶ月間有酸素運動を続けたグループは、脂肪肝の改善が見られたそうです。さらに、運動の時間は週250分以上(1日30分以上)続けている方に改善効果がみられ、250分/週未満の方では脂肪肝改善効果は見られなかったそうです[1]。

この結果からわかるのは、運動により脂肪を燃焼させるには、ある程度の時間継続して運動を続ける必要があるということ。

運動で肝機能改善を目指すなら、ぜひ、肝機能の改善・向上のために、脂肪を燃焼させる有酸素運動を1日30分以上、継続してみましょう。

参考[1]:筑波大学 2015年4月3日 プレスリリース「体重が減らなくても運動で肝脂肪が減る~中高強度の身体活動量は非アルコール性脂肪性肝疾患の肝病態を体重減少とは独立に改善させる」
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p201504031400.html

無酸素運動はおすすめできない!?

運動には、有酸素運動と無酸素運動があります。無酸素運動は、筋トレや短距離走など息を止めて瞬発的に体を動かす運動です。こうした運動は、実は肝臓のためにする運動としてはあまりおすすめできません。

と言うのも、運動で糖が途中まで分解された段階の物質「乳酸」は、長距離走などであればさらに糖の分解が進んで(乳酸が利用されて)いくのですが、短距離走のような無酸素運動では乳酸ができる量のほうが使われる量よりも多くなってしまいます。そうなると、できた乳酸は酸化されることになるのですが、一部が肝臓で糖新生によって再び糖に戻されてしまうこともあるのです。そうなれば、かえって肝臓に負担をかけてしまいかねません。

もちろん、無酸素運動全てが上記のような経緯を辿るわけではありませんし、果糖を摂取すると糖分解が高まり運動をしていなくても乳酸の血中濃度が上がる場合もあります。

無酸素運動だけを行うことは、効率よく脂肪や糖を燃焼させるためにはあまりオススメできませんが、無酸素運動もやり方によっては効果的。最初に無酸素運動をすると、体がエネルギー枯渇状態になり、ミトコンドリアが増え、その後の運動を効率的な有酸素運動とできたり、脂肪合成が抑えられたりするなどの作用もあるそうです。

乳酸は糖を途中まで分解してできた基質であるから,老廃物ではなく酸化基質である.しかも反応段階だけでピルビン酸になってミトコンドリアの反応系に入ることができるのであるから,これだけ使いやすいエネルギーは他にはない.特に運動時には多くの乳酸が利用されている.長距離走などで血中乳酸濃度が一定で推移することがあるが,そうした場合は乳酸ができていないのではなく,乳酸ができる量と使われる量とが等しいということである.これまでは乳酸は無酸素状態での借りをつくってできる老廃物であるという考え方から,運動中にできた乳酸は運動後には主として肝臓で糖新生によって糖に戻されるとされてきた.安静時などには,確かに乳酸の一部はこうした経路もたどるが,運動中や運動直後における乳酸の代謝を考える場合には,乳酸は主として酸化されている.

出典:「乳酸をどう考えたらよいのか」体力科学,59(1),2010[PDF]
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/59/1/59_1_8/_pdf/-char/ja

運動をするときのポイント

無酸素運動でも、有酸素運動前の準備体操として、軽い腕立てや腹筋を行う程度なら脂肪の燃焼を助けますし、日ごろ運動不足の人なら、有酸素運動で乳酸が発生することもあるでしょう。自分の体力に合った強度で運動をすることが大切です。

脈拍は110~120程度を意識

筋肉に乳酸をためない有酸素運動と無酸素運動の境界には個人差があり、もともとついている筋肉の量や日ごろの運動量によっても変わってきます。肝臓に負担をかけない有酸素運動をするには、脈拍を110~120程度に維持できる運動を続けると、適度な強度になるでしょう。

心電図を使わずに脈拍を測ろうとする場合、手首の内側にある拍動を感じる部分に、人差し指と中指、薬指の3本を当てて測定します。しかし、運動中に手首で脈拍を測り続けるのは難しいもの。その場合は、「運動をしながら楽に会話ができる」程度を目安にすれば、脈拍110~120を維持した有酸素運動となります。

腹式呼吸で効率を上げる

有酸素運動をする際に、腹式呼吸を意識すると有酸素運動の効率がアップすると言われています。腹式呼吸を行うことでインナーマッスルを使い、お腹周りのシェイプアップに役立つほか、より多くの酸素が取り込めるというメリットがあるためです。

しっかりと腹筋を使って腹式呼吸を行うと、それ自体が有酸素運動の代わりにもなります。腹式呼吸のやり方は、息を吸うときにお腹が膨らむように鼻から息を吸い、息を吐くときには凹むように口から息を吐くのがポイントです。

Good!Exercise

運動が良いとされる
本当の意味

運動が脂肪肝にいいと言われる理由の一つに、基礎代謝の向上があります。運動をすると、筋肉量が増加して基礎代謝が高まります。基礎代謝が活発になると、脂肪を燃やしながら、体重を落としてくれます。特に肝臓にたまった脂肪は、他の脂肪に比べると落としやすく、しかも肝臓は、再生能力が高い臓器なので、健康な肝臓を取り戻すことができるのです。

基礎代謝の大部分は、筋肉で消費されていると考えている方が多いと思いますが、実際には筋肉で消費されるのは18%に過ぎません。もっとも多いのが肝臓の27%です。運動をすると、筋肉の代謝が高まって筋肉量が増えます。筋肉量が増えると、糖代謝も活性化するので、肝臓にも負担がかからなくなり、肝機能の改善につながるのです。

運動により脂肪肝の改善にも

週250分以上の運動では脂肪肝が改善

脂肪肝になる原因として、アルコール以外に食べ過ぎによる肥満や、運動不足によるものも増えてきています。飲酒をしない人の脂肪肝は、有酸素運動を中心とした運動により、比較的短期間で改善することが可能です。

筑波大学の正田純一教授が行った研究[1]によると、ウォーキングなどの有酸素運動を週に250分以上、3か月間続けたグループは脂肪肝が改善していました。内臓脂肪は運動量が増えるほど減っていくことが明らかになっています。

参考[1]:体重が減らなくても運動で肝脂肪が減る (筑波大学 2015年4月3日)
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p201504031400.html

痩せなくても効果はある

一日に30分以上の運動を続けると、肝臓の脂肪が減りやすくなります。しかし、運動を続けていても体重が思うように減らず、本当に効果があるのかと疑ってしまいたくなることもあるでしょう。これは筋肉よりも脂肪のほうが軽く、有酸素運動は筋肉を維持しながら脂肪を減らすためです。

また実際に体重が減っていなくても、運動を続けていることで確実に内臓脂肪は減り、それによって脂肪肝も改善していきます。肝臓の状態を良くするための運動という観点から見れば、これは「効果あり」と言えるでしょう。体重の増減にはあまり一喜一憂せず、諦めずに根気よく運動を続けることが大切です。

ダイエットのし過ぎで脂肪肝になる場合も

お酒の飲み過ぎや食べ過ぎなどが脂肪肝を引き起こすことは有名な話ですが、実はダイエットが逆に脂肪肝を引き起こすこともあるのをご存知ですか?

例えばよく耳にする糖質制限ダイエット(KD)は、糖質を制限して糖質の代わりにエネルギー源として脂質を摂取するダイエット方法です。実は、この糖質制限ダイエット、肝臓にインスリン抵抗性を引き起こし、脂肪肝を引き起こす原因になる可能性があることが海外の研究者らによって報告されています。

Jornayvazらは,KDがエネルギー産生を増加させ体重増加を防ぐ一方で,肝臓インスリン抵抗性を引き起こすことを報告している(24).また,この報告では,脂肪肝を引き起こすDGの増加がインスリン受容体の下流因子であるIRSのリン酸化レベルを低下させ,インスリンシグナルの阻害を行うことも示されている.多くのKDによる動物実験では,脂質の占めるエネルギーが全体の90%ほどの飼料が用いられており,この結果はKDの「高脂肪な食事」による悪影響の存在を露呈したものである.

出典:「ケトジェニックダイエットがヒトの健康に及ぼす影響について」化学と生物,54(9),2016[PDF]
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/54/9/54_650/_pdf/-char/ja

糖質制限ダイエットに限らず、極端に食事量を減らしてしまうダイエットは、体が飢餓状態になり、代謝が低下する上に、「エネルギーを蓄えなければ」と体が錯覚し、脂肪をより溜め込もうとしてしまいます。そのため、一度食べ過ぎてしまえば、脂肪が通常よりも肝臓にたまりやすく、脂肪肝になりやすい状態になってしまうのです。