肝臓の仕組み
を解説
肝臓の仕組みと貯蔵の働き
肝臓の働きの一つに貯蔵があります。貯蔵によって私たちの身体の健康が保たれていますが、どのような働きがあるのでしょうか。代謝の仕組みや働きについてまとめています。
肝臓は、体内の化学工場といわれるように、様々な役割を担っています。その一つが「貯蔵」です。肝臓には、脳の働きに必要な、ブドウ糖(グルコース)を供給する働きがあります。脳は24時間休みなく栄養を必要としています。そこで肝臓では、いつでもブドウ糖の供給ができるように、グリコーゲンとして貯蔵しています。食物から吸収した脂肪分や糖分、たんぱく質・グリコーゲン・脂肪に分解・合成して、蓄えておき、不足した時にエネルギーとして消費します。
肝臓は三大栄養素である糖・脂質・たんぱく質をどのように貯蔵しているのでしょうか?
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糖質をグリコーゲンに変換
糖質は、ご飯やパン、麺類、果物等に含まれる成分です。摂取すると胃や腸に運ばれ、消化・吸収されて糖質に変わります。これが肝臓に送られると、一部は全身に運ばれてエネルギーとして使われます。そして残りの一部は、グリコーゲンに形を変えて肝臓に蓄えられます。空腹や絶食などでブドウ糖が減少すると、貯蔵したグリコーゲンをブドウ糖に変えて、エネルギー源として全身に送られます。ちなみに、肝臓のグリコーゲンの貯蔵できる量は100g程度。消費しきれずに余った分は、中性脂肪となって肝臓に蓄えられると、太り過ぎや肥満になります。
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脂質を貯蔵してエネルギーに変換
食物から脂質を摂取すると、小腸に送られて、グリセロールと脂肪酸の2つの物質に分解されて腸管で吸収されます。これらの物質を別の物質に合成するために、門脈(肝臓に注ぐ部分の血管)やリンパ管を経由して肝臓に届けられます。これらの物質は、コレステロールやリン脂質、中性脂肪に合成されたり、胆汁の材料となって再び血液中に戻ります。その一部は、脂肪酸が分解してエネルギーに変わります。消費しきれずに残ると、肝臓で中性脂肪に変化して、体内の脂肪組織に蓄えられて、太り過ぎたり、肥満になります。肝臓にも負担がかかって、肝機能の低下につながります。
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アミノ酸をたんぱく質に変換
肉類や大豆などから、たんぱく質を摂取すると、小腸に送られて、消化酵素によってアミノ酸に分解されて肝臓に運ばれます。そこでアミノ酸は身体に必要なたんぱく質に再び作り変えられます。様々なたんぱく質が作られますが、その代表ともいえるのが、アルブミンと血液凝固因子です。アルブミンは、血液の浸透圧を保持して、血管から水が流出するのを、防ぐ働きがあります。血液凝固因子は、血液を固める作用があり、出血した時の止血作用があります。肝機能が低下すると、これらが生成できなくなり、むくみや血が止まらないなどの症状がおこります。
肝臓には、血液を貯蔵する働きもあります。体内に流れている血液は、体重の約13分の1にあたるといわれ、体重60kgの人で約5ℓに相当するといわれます。そのうち肝臓には、全血液量の10分の1が蓄えられているそうです。肝臓は状況に応じて伸縮できるので、さらに500ml~1ℓの血液を余分に貯蔵することができます。こうして蓄えられた血液は、出血などで血液不足に陥った時に、それを供給して血液不足を解消する役割があります。
肝臓で貯蔵機能を担う細胞の一つが、「肝星細胞」と呼ばれる細胞です。星のような形をしていて、肝臓の代謝や合成活動に携わっています。肝星細胞は、ビタミンAを貯蔵する細胞として知られ、体の中にあるビタミンAの約8割が肝星細胞に貯蔵されています。
また、肝星細胞はコラーゲン線維を作り出す働きを持ち、肝硬変や肝炎の発症にも実は関わりが深い細胞です。肝星細胞が活性化すると、溜め込んでいたビタミンAを放出。代わりにコラーゲン線維を作り出します。肝臓が傷ついた際に、肝臓の細胞を補修する役割を担ってくれるのはいいのですが、活性化しすぎると肝硬変を引き起こしてしまう細胞でもあるのです。[1]
また、肝臓は、再生力が強い臓器。仮に肝臓の85パーセントが壊れてしまっても働き続けることができると言われています。肝星細胞はそんな肝臓の再生にも深く関わっている細胞でもあります。
肝星細胞の働きは、まだまだわかっていないことも多く、研究者の間でも盛んに研究が行われています。京都大学が2015年に発表した研究では、肝星細胞が肝炎の炎症反応を調節することもわかっています。[2]
ただ単に栄養素を貯蔵するだけでなく、肝臓の病気に深く関わる肝星細胞。今後、肝炎など肝臓の病気を治す治療法の開発において、大きな鍵を握る細胞として注目されています。
[1]参考:肝細胞研究会 研究交流『肝臓星細胞の不思議』(2018年1月31日確認)
http://hepato.umin.jp/kouryu/kouryu15.html
[2]参考:京都大学 研究成果『ビタミン A を貯蔵する肝星細胞が肝臓の炎症を制御していた -肝炎、肝硬変、肝癌の予防や治療法開発に期待-』2015
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/documents/151013_1/01.pdf