肝機能の状態を把握する5つの検査数値
肝臓の健康状態を知る一つの目安が検査数値です。一つの数値だけでは判断が難しく、複数の検査数値を総合的に見ながら診断します。ALT(GPT)・AST(GOT)・γ-GTP・ALP・総ビリルビンの5つの検査数値について、みていきましょう。
ALT(GPT)は、アミノ酸を作り出す酵素で、栄養素をアミノ酸に変えて、エネルギーを作り出す働きがあります。肝臓が健康な時は、ALT(GPT)も正常に働いて、エネルギーが代謝されます。ところが、アルコール等で肝臓がダメージを受けると、ALT(GPT)が血液中に流れだして数値が高くなります。ALT(GPT)は、そのほとんどが、肝臓に存在している酵素です。よって、この数値が高くなると、肝機能の低下や、何らかの病気を発症している可能性があると、考えられます。
ALT(GPT)の基準値:30 IU/L以下
ALT(GPT)に関係する病気
ALT(GPT)が高いということは、肝臓に負担がかかって、肝機能が低下している状態なので、肝臓を休めることが必要です。食事・アルコール・喫煙の3つを心がけることが改善につながります。高カロリーの食事は肝臓に負担がかかります。カロリーを抑えつつ、牡蠣・しじみ・レバー等、緑黄色野菜、果物を積極的に摂りましょう。お酒を毎日飲む人は、最低でも週に2日は休肝日を設けて。タバコも肝臓に悪いので、喫煙習慣のある人は肝臓のために、禁煙しましょう。
AST(GOT)は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの略です。細胞内で作られる酵素で、アミノ酸やエネルギーを代謝するときに、重要な役割があります。AST(GOT)のいる細胞が、アルコールやウィルス等の影響で破壊されると、血液中に流れでて数値が高くなります。AST(GOT)は、肝臓以外に、心臓や腎臓等の臓器に存在するため、この数値だけでは正確な判断はできません。ALT(GPT)も併せてみた上で、両方の数値が高ければ、肝臓機能の低下の疑いがあります。
AST(GOT)の基準値:30 IU/L以下
AST(GOT)に関係する病気
AST(GOT)と併せて、ALT(GPT)の数値も高い場合は、肝臓の機能低下が疑われるので、肝臓を休ませることが、数値を下げる近道です。具体的な方法としては、食生活の改善や、アルコールを控える、禁煙等があげられます。特にアルコールは、肝臓に負担をかける、最大の原因です。毎日適量以上を飲む人は、最低でも週に1~2日はお酒を飲まない、休肝日を設けて肝臓を休ませることが大切です。おつまみには、高カロリー・高脂質のものはなるべく避けて。
γ-GTPは、肝臓や腎臓などで作られる、解毒に関係する酵素で、アルコールと深い関係があります。アルコールの分解を担っていますが、過剰に摂取すると、分解の処理に追われてしまいます。また、肝臓や胆管の細胞が死滅すると、γ-GTPが過剰に分泌されます。余剰分が血液中に流れ出るため、γ-GTPの数値が上昇します。γ-GTPは、アルコール性の脂肪肝・肝炎に反応しやすく、数値が高いとアルコール性の脂肪肝や胆管の障害が疑われます。
γ-GTPの基準値:50 IU/L以下
γ-GTPに関係する病気
γ-GTPの数値は、アルコールのほかに、栄養過多による肥満が影響しているので、飲酒・食生活・運動習慣を見直すことで、改善できます。特にアルコールの過剰摂取は、アルコールに多大な負担をかけます。禁酒とまではいいませんが、週に2日の休肝日を設けるのがベスト。食事は高カロリー・高脂質・塩分を控え、カキやレバー等の肝臓にいい食材や、緑黄色野菜等などを積極的に摂り、栄養バランスを考えた食事に変えましょう。
ALPは、アルカリホスファターゼの略で、肝臓を始めとする身体のほとんどの細胞や臓器に含まれている酵素で、リン酸化合物を分解する働きがあります。胆道にトラブルが生じて、胆汁がうっ血したり、逆流がおきて分泌が悪くなると、血液中のALPが増加して数値が高くなります。ただし、この酵素は骨にも含まれているので、ALP値だけでは正確な判断ができません。ALP値とともにALT・AST・γ-GTP値にも異常がある場合は、肝機能低下の可能性があると診断されます。
ALPの基準値:100~325 IU/L
ALPに関係する病気
ALP値が高くなる原因の多くは、過度の飲酒・不規則な食生活・疾病・ストレス・不規則な生活習慣等です。これらを改善することで、ALP値が下がります。牡蠣やしじみ、レバー等を積極的に摂るといいでしょう。これらの食材は、肝臓の働きを強化する効果があり、弱った肝機能を回復させてくれます。アルコール・高コレステロール・高脂質、暴飲暴食、喫煙習慣・運動不足が続くと、肝臓に負担がかかります。生活習慣を改めて肝臓を労わりましょう。
総ビリルビン(T-Bil)は、赤血球の中にあるヘモグロビンが代謝された時にできる黄色い色素です。ビリルビンには、抱合型(直接)ビリルビンと非抱合型(間接)ビリルビンがあり、総称して総ビリルビンといいます。血液と一緒に抱合型が肝臓に送られると非抱合型に変わり、胆汁の成分となって尿・便とともに排せつされます。抱合型は赤血球が過剰に破壊されたとき、非抱合型は胆汁中のビリルビンが血液中に流出した時に数値が上がります。
総ビリルビンの基準値:0.2~1.2 mg/dL
総ビリルビンに関係する病気
総ビリルビンを下げるには、1.食生活の改善、2.生活習慣の見直しがあります。食生活の改善では、栄養バランスを考え、牡蠣・しじみ等の、肝臓にいい食材を積極的に摂ること。これらの食材は、アミノ酸・ビタミン・ミネラル・グリコーゲンが豊富で肝臓にいいといわれます。またアルコールや喫煙は肝臓に負担をかけるので、アルコールの摂取量を控え、禁煙を心がけ、生活習慣を改めることで、総ビルリビン値の改善につながります。