肝臓がんは肝機能の悪化の最終地点
肝臓がんは、肝機能の低下が引き起こす病気の一つ。発見が遅れると命にも関わるため、早期発見・治療が重要ですが、初期症状はあるのでしょうか。発症する原因や症状、予防・改善法について、みていきましょう。
発症しても自覚症状がないまま進行する
肝臓がんには、肝細胞がんと胆管細胞がんがありますが、一般的には肝細胞がんを肝臓がんと呼んでいます。肝臓がんはB型肝炎ウィルス・C型肝炎ウィルスが原因といわれ、40~60歳代の働き盛りで発症するケースがほとんどです。肝臓自体が痛みを感じない臓器です。ほとんどの場合、無症状のまま進行するため、症状が現れたときにはかなり悪化しています。定期的に健康診断を受けることが大切です。
長引く微熱・貧血は肝臓がんを疑って
肝臓は沈黙の臓器といわれ、異変が起きても痛みや違和感がほとんどありません。肝臓がんになっても、初期の自覚症状がほとんどないので、「がん」と診断された時には、かなり進行している可能性があります。特有の症状はありませんが、次のような肝硬変の症状がみられることがあります。
<症状>
これらの症状が長引くときは、肝臓がんかもしれません。早めに検査を受けましょう。
肝臓がんの症状は、肝硬変とそっくりなので、がんになっているかどうかは検査をして判別するしかありません。肝臓がんの検査方法は以下の通りです。
これらの検査について、順番に見ていきましょう。
<血液検査(腫瘍マーカー)>
腫瘍マーカーは、血液検査で調べられます。肝臓に特異的な腫瘍マーカーは以下の2つです。
AFPは肝細胞がんに反応して上昇する腫瘍マーカーです。ただ、肝炎や肝硬変でも上昇するため、他の肝疾患との区別には使いにくい傾向があります。しかし、AFP-L3 分画という腫瘍マーカーは、より肝臓がんによく反応する腫瘍マーカーです。AFP-L3分画を測定することで、肝細胞がんの早期発見だけではなく、予後管理にも使用できる点で重要視されています。
PIVKA-Ⅱは、肝細胞がんの時に上昇する腫瘍マーカーですが、ビタミンKが不足している時にも上昇します。また、薬剤(血液の抗凝固剤・抗てんかん薬・抗結核剤など)を服用しているときも値が上昇しますので、これらの影響がないかは確認しておく必要があります。
これらの腫瘍マーカーだけでは肝がんが分からない場合も多いです。がんでなくても腫瘍マーカーが高い値を示すこともあるため、多くの医療機関では、血液検査と同時に画像検査を併用することで、肝がんを特定していきます。 (大阪市立大学 大学院医学研究科・医学部医学科 肝胆膵内科 上野 綾子「血液データの見方 ~肝機能を中心に」[pdf])
<腹部超音波>
腹部超音波検査では、プローブをおなかに押し当てて、腹部の状況を画像で確認していきます。患者の負担がほとんどない検査ですが、数mmの肝臓がんも識別できる優れた検査です。慢性肝炎の患者は半年に1回、肝硬変の患者は3ヵ月に1回は超音波検査を受けると良いとされています。
ただし、腹部超音波検査は、高度の肥満や肝硬変でかなり肝臓が縮まってしまっている人、肺気腫で異様に肺が膨張している人などでは見えにくいという問題があります。これらの条件に当てはまっている患者は、超音波検査専用の造影剤を投与してから検査を行うと、肝臓がんかどうかが識別可能です。CT検査やMRI検査の造影剤にアレルギーがある人は、超音波検査専用の造影剤は使えることが多いので検査方法を相談すると良いでしょう。
<腹部造影CT>
ヨード造影剤の点滴により、がん化したところが白く映りますので分かりやすい画像検査です。肥満などで超音波検査では見えづらい人も、CT検査でははっきりと映し出せます。
<腹部MRI>
腹部MRI検査では、造影剤の種類を検査目的に合わせて変えることでがんの早期発見が可能になってきています。肝臓がんで言えば、Gd-EOB造影剤を使った検査で、これまで見つからなかったような小さながんが発見できます。MRI検査が受けられない可能性のある人は、体内に金属の入っている人や刺青のある人です。これらの条件に当てはまる場合は、検査方法を相談しましょう。
<腹部血管造影>
この検査は、局部麻酔が必要で1日入院して行います。太もも付け根の大腿動脈から細い管を肝動脈まで差し入れて直接造影剤を入れて診断するため、患者の負担は大きい検査方法です。 (国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター「肝がん」)
肝臓がんの病期(ステージ)分類は以下の通りです。
これらの検査について、順番に見ていきましょう。
ステージ | 症状 |
Ⅰ期 |
腫瘍はひとつ・2mm以下・脈管(門脈、静脈、胆管)に広がっていない かつ 転移がない(転移がある場合はⅣ期) |
Ⅱ期 |
Ⅰ期の条件のうち2つ合致 かつ 転移がない(転移がある場合はⅣ期) |
Ⅲ期 |
Ⅰ期の条件のうち1つ合致 かつ 転移がない(転移がある場合はⅣ期) |
ⅣA期 | Ⅰ期の条件すべて合致しない または リンパ節転移はあるが遠隔転移はない |
ⅣB期 | Ⅰ期の条件すべて合致しない かつ リンパ節転移はあるが遠隔転移はない |
がんがどんなに小さく個数も少なくても、転移が認められればステージはⅣ期となります。また、病期以外の分類方法として、肝障害度分類、Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類といった、肝疾患の症状の重さで分類する方法もあります。どちらも、腹水や血清ビリルビン値、血清アルブミン値といった症状や血液検査の検査値で測定でき、どの程度肝障害が進行しているかが分かる指標です。AからCまでの分類ですが、どちらもCが一番進行している状態です。
肝炎ウィルスや肝臓疾患が悪化して、肝臓がんになるので、肝臓疾患の治療と定期健診の受診で予防・改善につながります。次にあげる生活習慣の見直しも大切です。
身体が酸化すると、がんが発生しやすくなるので、野菜や果物、青魚を積極的に摂りましょう。青魚のDHA成分には、がん発生リスクを4割低下させ、エゴマの抗酸化成分「ルテオリン」にもがん抑制効果があるそうです。コーヒー、緑茶、ブロッコリー等も期待できる飲食物です。
喫煙や過度にアルコールを摂取すると、がん発生リスクが高まります。喫煙しなくても、間接的に煙を吸い込むのも同じです。禁煙したり、飲酒量を減らしたり、休肝日を設けて、がん発生リスクを下げましょう。