肥満が肝臓を疲れさせる!?
肥満は肝機能の悪化はもとより、全身疾患の原因としてもあげられます。肥満と生活習慣病・動脈硬化、肝臓との関係を中心に、病気や原因・症状を探っていきます。
アルコールの飲みすぎで脂肪肝になることは知られていますが、それ以外の原因でも脂肪肝になります。そうした脂肪肝を「非アルコール性脂肪肝」といいます。この脂肪肝になりやすい人は、肥満・糖尿病・高脂血症等の、メタボリックシンドロームの症状がある人です。食べすぎや運動不足になると、インスリンの分泌が悪くなり、エネルギーが効率よく消費されません。余剰になった中性脂肪が肝臓に蓄えられて脂肪肝になります。肥満人口の増加に伴い、非アルコール性脂肪肝になる人は、現在100万人。飽食の時代が生み出した病気といえるでしょう。
非アルコール性脂肪肝の症状
非アルコール性脂肪肝には、比較的症状が軽い単純性脂肪肝「NAFL」と、症状が重い非アルコール性脂肪肝炎「NASH」の2タイプがあります。かつては、非アルコール性脂肪肝は進行しないと考えられていましたが、最近ではNASHから肝硬変や肝臓がんへの進行が明らかになってきました。
脂肪肝になっても痛みの症状はありませんが、血液の流れが悪くなるので疲労感や肩こり、頭がぼーっとする等の症状がみられようになります。動脈硬化が進むと、心筋梗塞等の合併症がおこる場合も。食生活や生活習慣の悪さが影響してくるので、これらを改めることで改善できます。
肥満は、肝機能障害だけでなく、様々な病気の引き金になるといわれています。例えば、尿酸値が高くなることで高尿酸血症や痛風を引き起こしたり、すい炎を促進させることがあります。がんの発症リスクも高く、大腸がん・前立腺がん・乳がん・子宮がん患者は、肥満傾向の人も少なくありません。就寝中に気道を塞いでしまう無呼吸症候群もまた、肥満が原因になる恐れがあります。病気だけではなく骨や筋肉にも負担がかかり、腰痛・膝痛・関節痛などのトラブルや、転倒時に骨折を起こすことも。このように肥満は、深刻な病気や怪我を招く一因となるのです。
肥満は様々な病気を誘発しますが、その中でも特に注目されているのが、生活習慣病との関係です。生活習慣病とは、高血圧・糖尿病・高脂血症の、生活習慣が原因でおきる病気や症状。複数の症状があると、動脈硬化を促進するメタボリックシンドロームと診断されます。
肥満が続いて生活習慣病になると、血液がドロドロになって血管が傷つき、動脈硬化が進みます。血管内に老廃物が沈殿すると、血液の流れが悪くなり、心筋梗塞を始めとする心疾患や、脳梗塞等、後遺症を残したり、命に係わる病気になる恐れがあります。日本人はインスリンの分泌能力がもともと低い体質です。太ると生活習慣病になりやすいので、肥満にならない生活習慣を心がけましょう。
脂肪肝の原因として生活習慣に問題がある場合、生活習慣を改善することで肝臓に溜まった脂肪が取れ、それとともに肝機能も回復します。肝臓は脂肪が落ちやすい特徴がある反面、溜まりやすいという特徴も持ち合わせている臓器になります。そのため、一時的に生活習慣を改善し肝機能が回復したとしても、生活習慣が元に戻ってしまえば、また脂肪肝になってしまう可能性がありますので、悪い習慣を一切断ち切るよう努力しましょう。
また、食事や運動で意識をするとよい一例を挙げますので参考にしてください。
脂肪と聞いてまず思い浮かべるのは脂っこい食べ物ではないでしょうか。実はそれ以上に気を付けたいのは“糖質”が多く含まれている食べ物。代表的な食べ物は、麺類やごはん、パンなど。それに果物にも果糖が多く含まれており、また果糖は吸収もよいため、食べ過ぎには注意が必要です。麺類、ごはん、パンはいつも食べている量より、ほんの少し減らすだけで効果がありますので、ぜひ実践してみてください。
他にも、食事をする際には野菜から食べ始めることをオススメします。食事をすることで血糖値が急上昇するとインスリンが多く分泌されます。インスリンは糖分を中性脂肪として蓄える働きをするため、食事の際は血糖値を急激に上げないよう、よく噛むことを意識し、野菜から食べ始めることが大切になります。
筋肉を鍛えることで脂肪を燃焼しやすくなるため、脂肪肝にも効果的と言えます。とはいっても、キツいトレーニングをする必要はなく、スクワットやつま先立ちのような軽い筋トレで十分です。それに筋肉を鍛えることで基礎代謝が増え、太りにくい身体を作ることもできます。
筋トレでは特に筋肉量が多い“太もも”を鍛えるのがおすすめ。スクワットが特に効果的に太ももを鍛えることができますので試してみてください。コツは早く動くよりゆっくりと10秒ほどかけて行うのがより効果的です。最初は辛く感じるかもしれませんが、イスなどを使ってトレーニングを行いましょう。自分の健康のため習慣化して続けることが大切です。
参考- わが国におけるアルコール性肝障害の実態
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi1964/76/11/76_11_2178/_pdf/-char/ja
参考- 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の最近の話題
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/92/6/92_6_1104/_pdf/-char/ja