お腹に水が溜まるのは重篤な病気かも?
腹部が張っていると感じたり、胃が圧迫されて食欲不振になったりすることはありませんか?こういう症状が出た場合は、肝硬変や肝臓がん、アルコール性肝炎の可能性があります。ここでは、お腹の中に水が溜まる腹水について紹介。重篤な病気を患っている恐れもあるので、自分の症状に注意しながら確認してください。
腹水とは、お腹に水が溜まった状態のこと。下腹部が妊婦のように膨らんだり張ったりします。
通常、お腹の中には20~50mlほどの体液が存在しており、これがあることで臓器と臓器の摩擦が軽減できているのです。
しかし、腹水はこれ以上の量の水がお腹に溜まってしまい、膨張や不快感を生じます。胃が圧迫されて食欲がなくなったり、肺が圧迫されて呼吸がしにくくなったりすることも。
中には、足のくるぶしに体液が溜まってむくんでしまう場合もあります。
腹水が溜まってしまうのは、肝機能障害によりアルブミンが少なくなってしまうことが原因です。
アルブミンは血液中のさまざまな物質を運ぶ働きを持つタンパク質。肝機能が低下してしまうとアルブミンが作られなくなってしまい、血管から水分が漏れてお腹に溜まってしまうのです。
また肝硬変になってしまうと、消化管から流れてきた血液を肝臓に送る血管(門脈)の血流を受け入れられなくなり、この場合も水分がお腹に漏れ出てしまいます。
これは肝硬変の合併症である門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)に多く見られます。
腹水の症状が見られる主な病気には、肝硬変や肝がんがあります。
肝臓が小さく硬くなってしまう病気です。肝臓の機能が低下することにより、腹水やむくみが起きやすくなります。肝硬変での腹水は合併症である門脈圧亢進症によって発症することが多数。特にアルコール依存症による肝硬変によく見られると言われています。
世界でも発症数が多いと言われている肝がん。肝臓自体にできるものと、他の臓器から転移して発症するものがあります。肝がんは肝硬変や慢性肝炎を放置することで発展した病気。そのため、肝硬変や慢性肝炎の症状である腹水が見られます。
アルコールの過剰摂取によって肝臓が炎症を起こす病気です。肝細胞が急激に膨れ上がることで壊死や肝機能障害が発生し、肝硬変の原因となってしまう恐れも。悪化することで腹水やむくみが生じます。重症アルコール性肝炎という重い病気になる可能性もあるため、早めの受診が重要です。
炎症細胞によって肝臓の細胞が破壊され、その炎症が半年以上続いている状態のことを慢性肝炎と言います。数年、数十年と続く恐れのある病気ですが、比較的軽症で済むことが多いとされています。しかし、場合によっては肝硬変や肝不全を引き起こすこともあるため注意が必要です。
肝臓以外でも腹水を伴う病気があるため、違和感がある場合は早めに病院を受診するようにしましょう。
胃がん・肝臓がん・大腸がん・子宮がんなどの進行や再発、転移などによって「がん性腹膜炎」が発生。炎症によって体液が腹腔内に漏れることで腹水が現れます。
心臓に近い静脈から全身にかけて、右心室に血が溜まることで右心不全が起こり、その静脈にかかる圧が上昇することで腹水が溜まっていくと言われています。
腎臓が正常に機能しなくなった状態のことを腎不全と言います。腎機能が低下すると、アルブミン(タンパク質)が尿中に漏れて低蛋白血症を引き起こし、血管の外に水分が出てしまいます。それによって腹水が溜まっていくのです。
軽・中程度の膵炎であれば細胞はあまりダメージを受けていないため、治療により回復が可能です。ただし、重症の膵炎になると消化酵素が含まれた腹水が溜まってしまい、周囲の組織は炎症が発生。腹痛・嘔吐・呼吸困難などさまざまな症状が現れます。
腹部の膨満感がある、胃が圧迫されて食欲不振になっているというような腹水の症状が見られた場合は、肝硬変や肝炎など肝臓の病気、あるいはがん、心不全のような重篤な病気を患っている恐れがあるため、腹部に違和感を覚えたら早めに病院を受診するようにしてください。必ずしも肝臓の病気というわけではないので、内科・胃腸科・消化器科などの受診をおすすめします。また、女性特有の病気という場合もあるので、婦人科の受診も検討するようにしてください。
臓器の中でも肝臓のように自覚症状が出にくい部分があるので、早期発見・早期治療のためには定期的に検診を行うようにし、自分の体の状態を知っておくことが大切です。