
肝炎ウイルスの感染で起こる急性肝炎
ここでは急性肝炎の特徴や原因、治療法、予防策をまとめました。2000年ごろから福岡や北海道などで増えてきている急性肝炎。一般的に治療後の経過が良好な疾患ですが、1~2%の患者は劇症化し肝臓移植が必要になったり亡くなったりすることもあります。
急性肝炎とは、主にウイルスの感染が原因で急性の肝機能障害が起こる疾患です。主な症状は倦怠感、発熱、黄疸、むくみなどが挙げられます。いくつか種類があり、これまでに5種類の急性肝炎が確認済み。それぞれ感染経路が異なり、経口感染や血液感染などで発症します。経過が良好な疾患ですが、約1~2%の患者は劇症化することもあり、悪化すると肝臓移植治療が必要です。最悪の場合、死に至ることもあります。
参考-「急性肝炎」肝炎情報センター
ご飯や肉、野菜、水などが肝炎ウイルスに汚染されていた場合、食事で体内に取り込んでしまうことで感染します。一過性の感染が多く、数年単位で長期間感染することはありません。A型、E型の急性肝炎で見られます。
すでに肝炎ウイルスに感染している患者の血液を体内に取り入れることで感染します。主な感染経路は不衛生な器具でのピアス開け・注射など。一過性の感染だけでなく生涯にわたって感染する「持続感染」も見られます。B型、C型、D型の急性肝炎で見られます。
ウイルスに汚染された海産物や海外旅行時の飲食が原因で感染する急性肝炎です。潜伏期間が2~6週間と比較的短め。慢性化することはほとんどなく、免疫反応で抗体がつくられると再感染は起こりません。
B型肝炎ウイルス(HBV)は血液・体液を介して感染。性行為や入れ墨などで感染する一過性の急性肝炎と、出産時や乳幼児のときの感染は生涯続く慢性肝炎に分かれます。急性肝炎では1~6ヶ月の潜伏期間を経て発症し、数週間で回復。
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こる肝臓の病気です。HCVに感染すると約70%の人が持続感染者となり、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行していきます。2~14週間の潜伏期間を経て急性肝炎になることもありますが、比較的珍しい状態です。
D型肝炎ウイルス(HDV)は、複製のためにB型肝炎ウイルス(HBV)を必要とするウイルスで、同時に感染します。感染者の血液や体液が接触することで感染。現在、D型肝炎に対して有効な抗ウイルス療法はありませんが、B型肝炎の予防接種によって予防可能です。
経口感染する急性肝炎で、動物衛生研究所の報告では、豚や鹿などの感染も確認されています。症状がA型急性肝炎と似通っており、潜伏期間は2ヶ月ほどです。HAVと比べると劇症肝炎となる確率が高く、特に妊婦が感染した場合の死亡率は10~20%に達します。
黄疸や濃い色の尿が出たら注意すべき
急性肝炎の初期症状は発熱や咽頭痛、頭痛です。そのため風邪と診断されやすく、この時点での診断は難しいでしょう。肝機能障害かどうかは黄疸の有無で判断され、皮膚や眼球内の黄染で診断。黄疸が出るのとほぼ同じ時期に食欲不振、全身倦怠感、嘔気、嘔吐などの症状が起こります。
皮膚の黄染が出る数日前から濃い色の尿が出るのも特徴です。進行するごとに尿が濃くなり、ウーロン茶のような色からコーラ色に変化します。
目の結膜の変化や尿が濃くなった場合は急性肝炎かもしれないので、早めにクリニックへ行きましょう。
ウイルス型肝炎の中で感染予防法が確立しているのは、A型とB型の2種類です。この2種類の急性肝炎はワクチンが作られており、90%以上の割合で予防が可能。特にA型急性肝炎においてはほぼ100%です。
他の予防策としては、海外での生水・生鮮食品の摂取を控えることが挙げられます。アフリカ、東南アジアなど熱帯、亜熱帯の国々は、A型肝炎ウイルスの流行地域と言われているため、経口感染を未然に防ぐことが重要です。
黄疸が出ている場合は入院し安静にします。横になって安静にすることで肝血流の増加を促し、肝障害を治療。ビリルビン値の低下、自覚症状の改善が確認できれば、安静度が軽減されます。
急性肝炎のピーク時には食欲が落ち、肝臓が弱っているため、たんぱく質を1日60g以下(鶏ささみ5本程度)に制限した低たんぱく食療法を行います。
肝炎の種類に合わせて抗炎症剤、免疫抑制剤である副腎皮質ステロイド薬やB型急性肝炎の抗ウイルス剤を使った治療を行います。
C型肝炎においてはIFN(インターフェロン)を用い、専門医の管理のもとに治療します。
急性肝炎はC型肝炎をのぞき、一過性で自然に治りやすい疾患です。治療上、最も大切な観察ポイントは、ピークを過ぎたか否かの見極め。急性肝炎の治療後は、重症化、劇症化しなければ極めて良好です。A型、B型肝炎は一度の感染で一生効果が続く「終生免疫」が成立し再感染することはありませんが、C型肝炎では急性期を経過した後は、遷延化、慢性化に対してインターフェロン治療等の抗ウイルス療法が必要となります。また、再感染することも。
再感染や劇症化を防ぐため、予防や治療を徹底しましょう。黄疸や全身の倦怠感など急性肝炎の症状と思われるものが見られた場合はすぐにクリニックへ向かうようにしてくださいね。